第51章 Historia-そして物語は完結する。-
「どうしてこんなにも好きで好きで…堪らないのに…突き放して"嫌い"って…言えないの」
今のは自分に向けた言葉だ
彼を突き放すことができれば
それで何もかも終わりなのだ
彼が嫌いだと言ってくれれば
私は恋を忘れて消えることができる
愛を忘れて逝くことができるのだ
「隊長…きらいって…言ってください…。そうすれば私は…あなたを忘れますから…」
声が震える。
「一言、嫌いだって…言えばいいんです…。
もう会いたくないって…言って…くれれば…」
「…嫌いだって言ってもお前は泣かないんだな?」
無言で頷いた。
顔を伏せた梨央に日番谷はどこか悲しい顔を浮かべる。
小さく息を吐いた日番谷は真っ直ぐに梨央を見た。
「嫌いだ」
「!」
ビクッと肩を揺らす。
「………………」
「………………」
お互いが無言を通す。
「は、はは…」
「!」
「あ…ありがとう…ござ、います…っ、これで…心置き無く…素直に…い、逝ける、ような…っ…気がします…っ。た…隊長…も…私のことは…は、早く…忘れ、て…っ……幸せに…」
「……………」
「っ………」
視界が涙で滲む。
気付かれないように必死に声を押し殺す。
これでいい
これでいいのに…
「うっ……」
慌てて口を噤む。
何で涙が溢れるの────。
「はぁ…」
グイッ
「っ!!?」
「ほら見ろ、やっぱり泣くんじゃねーか」
深い溜息を吐いたかと思えば、日番谷は両手で梨央の頬を包み込むと無理やり顔を上げさせた。
梨央の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「俺の言葉に傷付いて泣くぐらいなら自分から嫌いになれとか言うな。とはいえ…俺もお前を傷付けたな、悪い」
「な、何で隊長が謝るんですか!わた、私が…全部悪いのに!それにこの涙は…その…世界が救われてホッとした涙です!」
「嘘ばっかりだな」
「嘘じゃありません!」
「じゃあ仮に俺がお前に"顔も見たくないから消えてくれ"って言ったらどうすんだ。それでもまだ世界が救われてホッとした涙ですって言えるのか?」
「え……」
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