第51章 Historia-そして物語は完結する。-
話し終えると日番谷からの返事はない。
「(沈黙が一番キツい…)」
恐る恐る日番谷を見ると驚きの余り言葉を失っているようだった。
「ま、待ってくれ…」
「はい」
「どういうことだ…?」
「混乱させてしまい申し訳ありません。話すかどうか迷ったのですが…」
「お前…ユーハバッハに殺されたのか?」
「はい。奴に一度殺され、自分が世界から消えるのを条件に生き返りました」
「それは…奴への復讐と高峰を護る為にか?」
「はい。悪魔が囁いたんです。そして私は迷うことなく、その取引に応じた。後悔なんて…ありませんでした」
「……………」
「私から全てを奪っていったあの男への復讐を何としても果たしたかった。そして…独りぼっちになってしまう兄を───守りたかった」
「高峰はそのこと知ってんのか?」
「言えるわけありません。彼は私が犠牲になることを一番嫌います。あの男を殺せると思っていたら逆に死んでしまった。でも望みを叶える為に生き返った───なんて知られてしまえば、きっと私を許さない」
悲しげに笑む。
「あの頃の私には兄が全てだったんです。私のいない世界に…彼を独りぼっちにさせたくなかった。でも結局、独りにさせてしまう」
「本当に後悔はなかったのか?」
「はい」
ハッキリ答える。
「復讐を果たした後は私が消えるだけ。兄さえ生きててくれれば他に何もいらない。ずっとそう思いながら生きてきました」
そう言って日番谷を見た。
「でも…貴方に出逢ってしまった」
「!」
「貴方に出逢わなければ私は愛を求めなかった。貴方に愛されたいなんて───思わなかった」
「……………」
「仮に貴方と出会ったとしても恋に落ちなかったかも知れない。そのままでいたら何も残さず消えることができた」
泣きそうな顔で笑う。
「でも私は貴方を愛してしまった」
「……………」
「その愛が永遠に続かないことは知っていたのに…望んでしまった。貴方に愛されたいと」
あの時の私は
後悔はないと言った
でも…恋を知って、愛を求めた
彼に…出逢ってしまったせいで───
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