第51章 Historia-そして物語は完結する。-
「彼に渡した勾玉には私の力を封じ込めてある。それも強力なのな。この日の為に作り、彼に持たせておいた。お前が最後の足掻きを見せるのを見通してな」
憎しげに梨央を睨みつける。
「巫山戯るな!!それで私を殺したつもりか!!これで復讐を果たしたつもりか!!」
「──やっと…お前の目的を阻止できた。あの日から何千年…どれだけこの日を待ちわびたか。どうだ、これが私の…私達の力だ」
ユーハバッハは目を見開き驚く。彼女の傍に千歳と伏見と蒼生の姿が見えたからだ。全員、強い眼差しで此方を見ている。
「それと…母様の力は返してもらった」
「!」
「お前はここで消える」
「……………」
「私達の勝ちだ」
梨央は刀を鞘に収める。そしてユーハバッハは一護に視線を戻す。
「無念だ。お前のお陰で生と死は形を失わず、命あるすべてのものはこれから先も死の恐怖に怯え続けるのだ。永遠にな」
そう言い残し、ユーハバッハは消滅した…。
「お前の望んだ世界は確かに恐怖は無いだろう。だが死の恐怖の無い世界では人はそれを退けて希望を探す事をしないだろう」
殺伐とした雰囲気が消え、落ち着いた口調で喋る。
「人はただ生きるだけでも歩み続けるが、それは恐怖を退けて歩み続ける事とは違う。だから人はその歩みに特別な名前をつける」
柔らかげに笑み、一護を見る。
「“勇気”と」
嬉しさに胸辺りの死覇装をギュッと握る。
「キミは本当に凄いよ。自分の力で世界を救ったんだ。キミが護りたいと願ったものはすべて守られた。やっぱり…私の希望はいつまでも永遠に輝き続ける」
力を使い果たした勾玉もユーハバッハと一緒に消滅した。
「ありがとう黒崎一護くん。
そして…さよなら、いっちー」
目を閉じ、笑う。
「「“願わくば、この先もキミが幸せでありますように”」」
二つの存在が一つの言葉を告げる。
梨央は一護に声を掛ける事なく、背を向けてゆっくりとその場を立ち去った。
「!」
さっきまで一緒にいたはずの梨央の姿が見えないことに気付く。
「梨央…?」
一護は不思議そうな顔を浮かべた────。
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