第51章 Historia-そして物語は完結する。-
「何だその強さは…」
ユーハバッハは眉を顰め、顔をしかめる。
「これが本来の私の強さだ」
「(これ程までとは…)」
「“予想外”と言った顔だな」
ククク…と声を押し殺して笑う。
「『闇鏡』」
円状の鏡が目の前に展開し、その中から闇のエネルギーを纏った小さな球体が幾つも現れ、ユーハバッハに向けて放たれた。
「この程度の技で私が殺せると思うか!」
向かい来る球体を剣で斬り裂く。
「注意しろよ」
「!」
切り刻まれた球体が───爆発した。
バァン!!
その威力は強く、煙の中から現れたユーハバッハは頭から血を流している。
「だから言っただろ。“注意しろよ”って。その忠告を聞かずに斬ったりするからだ」
ユーハバッハは鋭い眼で梨央を見た。
「私の技なんて全然大した事ないんだよ。誰もが使えるような技ばかりで面白味が無い。炎熱系や氷雪系、雷電系や水流系みたいに派手な技が無い。でもそれはそれで良いと思ってる。敵を殺せるなら何だって構わないんだ」
残酷な顔で笑う。
「(何だ…この異常な感じは。
どこから…漂ってくる。)」
「次は心臓を刺すか」
「(この少女か──!!)」
ニヤリと歪んだ顔で笑う梨央を見て、ユーハバッハは目を見開き驚く。
「あぁ…首を落とすのもいいなァ」
ぐにゃりと笑う顔が歪み、ユーハバッハは全身を身震いさせる。
「(なるほど…“これ”が貴様か。)」
普段は飄々としていて誰に対しても優しい性格だが…その心の奥に眠った『もう一つの顔』。
敵と見做した者には一切容赦せず、仕留めるまで何度も追いつめ、とことん殺しに掛かる残忍さ。
戦いそのものを愉しむ傾向があり、時にはそれを咎められるも、すぐに殺してはつまらないという理由だけで、本気を出さないイカれた性格を持ち合わせている。
まさにその姿は『戦闘狂』と言っても過言ではない───。
「(本当に狂っている。)」
ユーハバッハですら、彼女に対して激しい嫌悪感を抱いた。
「お前には死んでもらう」
すると梨央の後ろに黒い影が揺らめく。
「!」
ユーハバッハは異変に気付く。
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