第51章 Historia-そして物語は完結する。-
「え……?」
驚いた顔を浮かべるが、すぐに自嘲めいた笑みを見せる。
「嘘よ…こんな血のような色…認めたくないけど…悪魔の手によって染められたかのように真っ赤でしょう…?」
「嘘では無い…。私は本当に…美しいと思った。
…その…薔薇のような色に…魅了されたのだ…」
「!!」
「お前に似合う色だと思った…」
「(薔薇色…)」
じわり…と涙が浮かんだ。
「鈴を渡した時…お前は笑ってくれたな。…その笑顔が…愛らしいと思った」
「っ………」
「怒るところも不機嫌なところも…強気で…意地っ張りで…素直になれないところも…全て愛しいと思った」
「ユーゴー…?」
困惑している詩調の表情さえ、ハッシュヴァルトは愛しいと思ってしまう。
「突然どうしたの?」
「お前が好きだ」
「え…?」
「愛しているんだ、お前を」
重ねられた手が解け、ハッシュヴァルトは指を絡めて、詩調の手を繋いだ。その感触にビクリと反応した詩調に言葉を続ける。
「嫌なら…今度は…お前が私を突き放してくれ…」
“突き放せ”と云うわりに繋がれた手はしっかりと握られている。その手に視線を落とす詩調。
「(二度と会いたくないって思った。再び出会ってしまえば…捨てた筈のあんたへの想いを求めてしまうから。本当に残酷な運命。裏切られて憎い筈なのに…突き放せないなんて───。)」
“素直になれ”
そう誰かが言った気がした。
「(素直に…。ふっ…そうね。)」
繋がれた手をギュッと握り返す。
「あたしも好きよ、ユーゴー」
嬉しそうに笑い、ポロポロと涙を流す詩調。
「ずっとあんたが好きだった」
「!」
「愛してるわ」
「(あぁ、やっと…)」
ハッシュヴァルトの目にも涙が浮かぶ。
「(ずっと傍にいられる───。)」
冷めていた心に温かさが広がる。
「(彼女の笑顔を守れる───。)」
守れなかった約束
裏切ってしまった約束
“彼女を守るという約束”
それはもう叶うことはないが
今こうして二人は愛を伝え
幸せそうに笑っている
「この世界は…もうじき終わる…」
「終わらないわ」
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