第50章 Fellow-贈る言葉-
「もう諦めたのか一護、お前らしくもない」
「(俺の剣も通じねえ、井上の盾も通じねえ。終わりだ。)」
「──これまでか、つまらぬ…いや、愉しませて貰ったと言うべきか。さあ、お前の最後の使命だ。お前に与えた我が力、返してもらうぞ」
手を伸ばし一護の顔を掴んで力を奪う。
「(ああ、消える。俺の中の滅却師の力が。それと混ざり合っていた虚の力が、消える。消える、真っ白に。)」
一護は力を奪われ、倒れる。
それを悲しそうな顔で梨央は見ていた。
◇◆◇
「…まだ動けたのか」
「…僕が…はっ、はっ、黒崎達に似てるって…?はっ、」
冷たい眼で雨竜を見下ろすハッシュヴァルト。
「…僕は…今まで…全て冷静に…君の言う天秤にかけて行動してきたつもりだ…でも黒崎はバカだからそれができない。助けたいと思ったら助けに行くんだ」
ハッシュヴァルトは刀をギュッと握り締める。
「井上さんもバカで茶渡君もバカで朽木さんもバカで…仁科さんもバカで…阿散井もバカだ…。僕がもし…そのバカな連中と同じに見えているのなら…僕は嬉しい」
「…"嬉しい"だと?お前の感情の事など最初から問うてはいない。奴等と共に居る事がお前に利するとは思えない。そう言っているのだ。奴等と共に居てお前は成長したか?」
ハッシュヴァルトは淡々と言葉を語る。
「奴等と居た数年よりも陛下に力を与えられた一瞬の方がお前は成長している筈だ。互いを高め合うのが仲間ならばお前が命を賭すべきは奴等ではなく陛下だ」
「…天秤は…選択だと言ったな…僕はその選択で…彼らと共に居る事を選んだ…だけどそこに利害は無い。正解も不正解も無い」
そして言った。
「僕らは友達だからだ」
その言葉を聞いてハッシュヴァルトは怖い顔をした。
"友達"
その言葉で思い浮かんだのは、誰か───。
少なくとも、彼の脳裏にその"友達"が浮かんだ筈だ。
「──そうか、よく解った。お前は陛下に認められておきながら何も捨てるつもりは無いという事だな。ならばせめて命を捨てろ石田雨竜!!!!」
剣を振り上げた瞬間、凄まじい光がハッシュヴァルトに襲いかかる。それは…ユーハバッハによる、二度目の『聖別』だった。
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