第50章 Fellow-贈る言葉-
「僕の…聖文字…"A"、"完全反立(アンチサーシス)"」
その瞬間、ハッシュヴァルトの全身から血が噴き出た。
「…な…何だこれは…!」
「"完全反立(アンチサーシス)"。指定した2点の間に"既に起きた"出来事を"逆転"させる事ができる。今回はシンプルに僕と君の"傷"を"逆転"させた」
ハッシュヴァルトに傷を移したことで雨竜は無傷の状態だった。
「…成程…素晴らしい能力だ…陛下が…目をお掛けになるのも無理はない…。起きた事を…逆転させる力なら…陛下の御力に刃向えるのは…お前だけかも知れないのだからな…」
「…どういう意味だ…君の言っていた『全知全能』の真の力の事を言っているのか…!?」
「…好きな様に取るがいい。私に言えるのは…お前をここで足止めしたのは正解だったという事だ…」
雨竜は急いで一護達の下へ向かおうとハッシュヴァルトに背を向けて走る。
「…行かせると────思うか」
雨竜の体から血が噴き出し、地面に倒れ込む。
「言った筈だ。"不運"は分け与えられる。そして我が身の不運は"全て"この『身代わりの盾』で受ける事ができる。つまりはこういう事だ。お前が私の体に傷を与えた"幸運"は同量の"不運"としてお前に降り注ぎ」
溢れる血が地面を汚す。
「私の体に与えられた"不運"はこの『身代わりの盾』に移し取られ────更なる"不運"としてお前に降り注ぐ」
雨竜の全身から大量の血が噴き出す。
「"勝ち目は無い"と言った筈だ石田雨竜」
「はっ……はっ……はっ……」
「…まだ諦めないのか」
痛みを堪えながら雨竜は傷だらけの体を引きずって一護達の所に行こうとする。
「…お前は賢い男だ。私にも陛下にも敵わぬという事は理解できている筈だ」
ハッシュヴァルトは突き刺さっていた剣を引き抜いた。
「…"お前の姿が見えない"と言ったが撤回する。お前はあの信じ難い程愚かな人間共と」
雨竜の真上で剣を構える。
「とても良く似ている」
そして振り下ろした。
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