第50章 Fellow-贈る言葉-
一護を六花で守るようにと織姫に向かって叫ぶ。織姫は咄嗟に六花でユーハバッハが振り下ろす剣から一護を守った。
「井上!!」
瞬間、一護の体から血が噴き出た。
「………!!」
「なんで…防いだのに…!」
「…疑問は無かったのか?"ただ未来が視えるだけで"お前の足を踏み下ろす全ての場所に寸分違わず罠を仕掛けられる事に」
一護は地面に伏せる。
「既に頭を過っているだろう。それが正解だ。"未来は変えられる"お前達はそう言ったな。『全知全能』は"未来を視る"力ではない。"未来を改変する"力だ」
三人はユーハバッハの本当の能力の意味に目を見開く。
「恐れるな、お前達の持つ力と何も変わりはしない。お前達がその眼の前の一瞬にしか干渉する事ができぬように私はこの眼に映る未来の全てに干渉できるだけの事だ」
バカな…
"未来を改変できる力"だと?
そんなものが存在するのか
未来の全てに干渉できるというのか…?
「一護よ、お前は今迄幾度となく、絶望を乗り越え未来を変えてきただろう。何故それができたか解るか。そこに私が居なかったからだ。一護よ、未来を変えてみろ。それがどれほど素晴らしい未来だろうと私はそれを"視ている"」
ユーハバッハは剣を縦に構えて掲げる。
「そしてお前が変えたその未来さえ斬り刻んでみせよう。さあ、絶望してくれるなよ、一護」
「あ、あああああああああああああっ!!!!!!!」
◇◆◇
息を乱した雨竜が血だらけで崩れ込んでいる。
「…私の聖文字は"B"、"世界調和(ザ・バランス)"。範囲世界に起こる不運を幸運な者に分け与えることで世界の調和が保つ。そして我が身に起こる"不運"は全てこの『身代わりの盾(フロイントシルト)』で受ける事ができる。お前に勝ち目は無い、石田雨竜」
ハッシュヴァルトは剣を地面に突き刺す。
「お前から訊き出せる事も最早無いだろう。何も語らぬならそれも良い。これまでだ」
「…待て…!」
「!」
「…君は…見たくはないのか…僕の…聖文字を…」
「…つまらぬ延命だな。それで勝てるならとっくに使っている筈だ」
「…逆さ…そろそろだと…思ったんだ…」
「……どういう意味だ」
.