第50章 Fellow-贈る言葉-
「元からアレには何の期待もしていない。最後に奴が裏切る姿は───この眼で視えていたからな」
「未来が視えていたから何も期待はしなかった…なるほど…居心地が悪い訳だ。そりゃあ…"そういう眼で見る"よなァ」
「何が言いたい」
「お前にはわからないよ」
冷たい眼で互いをじっと見つめる。
「いいのか、私とのお喋りに気を取られていて」
「!!」
瞬歩で現れた一護は刀を振り下ろした。
「解せんな。何故そう死に急ぐ。」
「解せないな。何故そう生き急ぐ。」
代わりに答えたのは梨央だ。
「私は生き急いでる訳でも、死に急いでいる訳でもない。一護、私に力を見せるのが惜しいか。私に力を見せ奪われるのが惜しいか。だがそれでいいのか一護。お前がこのまま死ねば現世も尸魂界も終わりだ。私が終わらせる。それでいいのか一護」
距離を取る一護の頭上に三天結盾が現れた。
「!」
「見ろ。お前の仲間はそれでは駄目だと言っているぞ。傷を癒し、お前に戦えと言っている。応えろ一護、力無き者達の声に。お前がおらねば呼吸もままならぬ弱き者達の為に」
一護は息を整えると再度、ユーハバッハに突っ込む。
「立ち、戦い、そして死ね!」
力に押され、一護は地面に倒される。
「井上っ!!」
三天結盾でユーハバッハの力を防ぐ。
「───ありがとな井上」
「……うん。黒崎くんの動きについていけなくて服を少ししか掴めなかったのに黒崎くんは止まってくれた」
「何か理由があるんだよね」
「…ああ」
その瞬間、煙に紛れて一護の姿が変わる。
織姫はその姿を見て凍り付く。
虚圏の時、我を忘れて虚化になった姿だと…。
「…く…黒崎…くん…」
恐る恐る名前を呼ぶ。
「おう」
だが返事をした一護はいつもと変わらなかった。
「大丈夫だ井上、"俺"のままだ」
「もしあの時と同じ状態なら私が止めてるよ」
織姫は安心したせいか、目が潤んでいる。
「───どうやら虚のように見える。
それがお前の力と溶け合った虚の力か」
「そうだ。おふくろから受け継いだ滅却師の力である斬月のおっさんと親父から受け継いだ死神の力と溶け合った俺の中の虚」
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