第50章 Fellow-贈る言葉-
「力は使わぬ、久し振りの父子(おやこ)の会話を愉しみたい」
「俺の親はあんたじゃねえよ」
「黒崎一心か。あれは仮初の父親に過ぎぬ。お前は既に聞いた筈だ。自身の力の根源について」
「聞いたさ。それが何だ。あんたは俺の親じゃねえ、俺の親を殺した男だ!」
「母の事か、女々しいぞ一護!」
一護は鞘から刀を振り抜いて空気を払う。
そのままユーハバッハに突っ込んだ。
「月牙天衝!!!!」
刀を勢いよく振り下ろして斬撃を飛ばす。
ユーハバッハは黒い壁を自身の前に出現させて斬撃を防ぐ。
そして逆に黒い影を使って一護に襲いかかった。
だが織姫の三天結盾で身は守られる。
一護は三天結盾に防御してもらいながら、もう一度、ユーハバッハの前で刀を振り下ろすもこれも止められてしまう。
「───何を悲しむ事がある。奴は死すべくして死んだのだ。お前を産み、我が糧となる為に生きた。何が不満だ。これ以上の幸福があるか!!」
ドーン!
「黒崎くん!!」
黒い影の攻撃で一護は吹き飛ばされた。
ザワッ
「!」
殺気が混じる霊圧を感じてユーハバッハは視線を向ける。
「あのまま大人しく死んでいればもう一度死を味合わずに済んだというのに…再び私に殺されに来たか」
「まだ死ぬと決まったわけじゃない」
「貴様が死ぬ未来は既に私の眼に視えている」
「だったら未来を変えればいい」
「不可能だ」
「やってみなきゃわからない」
「例え未来が変わっても既に死んだ仲間が生き返る事は無い」
梨央は訝しげに顔をしかめた。
「私はお前を許さない」
ユーハバッハは憎悪の眼差しを向ける梨央を見る。
「母の事を言っているのか?それとも仲間の事か?名も亡き人形の事か?」
「雅は返してもらう」
「アレは我が僕だ。拾ってやった恩を返さない程、自分の価値が解らない訳ではあるまい」
「彼に名前を与えてくれたことには感謝するよ。だが…もう彼は“名も亡き人形”の“流祇流雅”じゃない。“零番隊三席”の“流祇流雅”だ」
ユーハバッハを睨む。
「お前の眼に視えている未来が全てじゃない」
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