第49章 Divortium-君のための嘘-
「…え…えっと…ど…どうしようバズ…」
困り顔を浮かべてユーゴーはバズビーに尋ねる。
「バズ…」
振り返ってバズビーを見たが、彼は嫉妬心からユーゴーを鋭い眼差しで睨み付けている。
それは友達に向ける顔じゃなかった。
バズビーの心を支配したのはドス黒い感情。彼は戸惑うユーゴーの顔など気にも留めない。
なんでだよ
2人で側近になって
ユーハバッハを殺すはずだった
俺には才能があった
お前には無かった
2人で側近になれなかったとしても
1人だけなら俺だったはずだ
それがなんでお前なんだよ
ユーゴー!!!
「(なんで?)」
やめてよバズ
なんでそんな眼で見るの
どうして一緒に喜んでくれないの
「城へ戻り馬車を用意せよ。
この者を城へ連れていく」
「はっ」
「あ…あのっ!」
ユーゴーは立ち去ろうとするユーハバッハを呼び止める。
「あのっ…何かの間違いだと思います…」
「…何だと?」
憲兵が威圧的な眼光でユーゴーを見る。
「聞き捨てならんな小僧。陛下に選んで頂いた貴様が陛下の何を間違いなどとほざくのだ」
「ぼくには…滅却師の才能なんてほとんどないんです…弓も矢も作れなくて…ぼくなんかよりあそこにいるバズの方が…陛下の側近に…ずっと相応しいと思います…!」
ユーゴーの言葉に驚いたバズビーはギリッと歯を噛みしめる。屈辱だった。情けをかけられた。ユーゴーの言葉はそんな黒い感情を渦巻いたバズビーの心を簡単に打ち砕いたのだった。
「まだ言うか貴様!」
声を荒げる憲兵に馬から下りるユーハバッハ。
「!?」
「やはり我が眼の視た通りだ」
そしてユーゴーに近付く。
「お前はまだ自らの力が何であるかを知らぬ。神聖弓が作れぬのも当然のこと。お前は“私と同じ”“分け与える力”を持つ滅却師だ」
ユーゴーは驚く。
「長らく捜した。何しろ同じ力を持つ滅却師は私が生まれて後、二百年、一人たりとも生まれていなかったのだ」
バズビーは古い言い伝えを思い出し、目を見開いた。
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