第49章 Divortium-君のための嘘-
「試験は後日だ。追って通達がある。それまでに精々腕を磨いておけ。貴様の如き凡骨を通す程、広き門ではないがな」
「だ…だってさバズ…今日はもう帰ろう?」
だがバズビーは立ち去る憲兵隊の前に弓を射ち落す。
「…腕を見せりゃいいんだろ?だったら勝負しようぜ憲兵さん。俺が勝ったらあんたのその椅子俺にくれよ!」
馬から降りた憲兵は剣を引き抜く。
「無礼な猿だ。死なねば己の無力も解らぬか」
「“憲兵、猿に殺される”ってな。仲間の伝令がユーハバッハ様にそう伝えてくれるだろうぜ!」
殺気を纏わせて同時に走り出す。
「バズっ……」
ユーゴーが止めようとしたその時…
「!?」
バズビーの体が重力を奪われたかのように突然地面に伏せて倒れた。それは周りにいた人々も同じだった。
「(何だ…何が起きた…!?)」
訳が分からないバズビーの前に現れたのは…
「(ユーハバッハ…!!!)」
黒い馬に跨った滅却師の始祖だった。
「(そうか、これは霊圧かよ…。俺達みんな霊圧で跪かされてんのかよ…バケモノめ…!!!)」
バズビーは空から押し潰されているかのような感覚に息苦しさを感じ、汗が流れる。
「も…申し訳ありませんユーハバッハ様!
かのような猿めと私闘など…!」
「良い、私は探し物を拾いに来たのだ。
私の右腕となる者を拾いに」
「(ここだ。ここにいるぞ!!)」
口角を上げてバズビーは笑う。
「(てめえが捜してるのはこの俺だ!!この俺がてめえの右腕になってやる。そしててめえは俺に殺されるんだユーハバッハ!!!)」
霊圧をねじ伏せて無理やり体を起こすバズビーの視線に映ったのは…
「お前だ」
ユーゴーに歩み寄るユーハバッハだった。
「私はお前の名を知っている。
ユーグラム・ハッシュヴァルト。我が半身よ」
「…え…?」
ユーゴーは驚いた顔を浮かべる。
「あ…あの…ぼくが何ですか…?
何のことかよく…」
「解らずとも良い。お前はこれから我が側近として星十字騎士団に入る」
側近
ぼくたちがずっと
なりたかったもの
そのためにずっと
つらい鍛錬に耐えてきたもの
その側近をぼくが───……!?
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