第49章 Divortium-君のための嘘-
5年
その5年の俺達に
休息は無かった
森の奥深くに
身を潜めながら
昼も夜も無く
ただひたすらに
自分達の力を磨き続けた
俺は相変わらず天才だった
詩調の両親は病で死んだらしい
やっと暴力から解放されたこいつは
自分を守る力が欲しいとかで
ユーゴーから剣を習い始めた
その腕前は俺達に比べると
まだまだ足元にも及ばないが
どこか太刀筋はユーゴーと似ている
まぁ当たり前か
こいつが丁寧に教えてんだから
似るのは当たり前だ
気のせいじゃないと思うが
最近、詩調の纏う雰囲気が
柔らかくなった気がする
きっとユーゴーのおかげだろう
そしてこいつらは
互いに赤い鈴を交換して
お揃いで持ち歩くようになった
それが何を意味するのかは
俺が知らない筈はない
でも知らないフリをしておこう
それがこいつらにとって
前に進む勇気にもなる
そして
ユーゴーに
滅却師の才能は無かった
5年経っても
霊子を集めることもできなければ
相変わらず弓の一つも作れないままだった
聞いたことはあった
昔は何十年かに一人
そういう滅却師が
生まれていたこと
そういう滅却師は
不全の者として
幼いうちに
間引かれていたこと
そして
そういう滅却師も
もう何百年と
生まれていない
今となっては
古い言い伝えの
ようなものだということ
俺は
ユーゴーと組んでも
ユーハバッハを殺すのに
何のメリットにも
ならないのだろうと感じていた
だが
自分の才能の無さを補おうと
俺よりも必死に
剣と弓に打ち込むユーゴーを
俺はどうしても
見捨てる事ができなかった
ユーゴー自身は
そのことに気付いていたのかどうか
そして
その日がやってきた
.