第49章 Divortium-君のための嘘-
「一人でも立ち向かえる強さが欲しい。あんな奴らに屈せず、堂々と真正面から戦える力が欲しい。あんたは剣が扱える。だから…あたしに剣を教えて」
その眼は本気だった。
だがユーゴーの眼には彼女が日頃から虐待を受けている生々しい傷跡が映り、辛そうに顔をしかめた。
「ぼくが…守ったらダメ…かな」
「え?」
「あ…いやその…」
自然と口から出た言葉にユーゴーは戸惑う。彼女を守りたいのは本当だ。理不尽な世界に生まれて、実の両親からの愛を受けず、髪色を理由に迫害を受ける詩調が傷付くのを黙って見ているのは苦しい。だからこそ、ユーゴーは彼女の支えになりたいと心から思った。
「きみを傷付ける奴がいたらぼくが守るよ」
ユーゴーは真っ直ぐに詩調を見つめる。
「ぼくにきみを守らせてほしい」
ユーゴーの想いに詩調は驚いて目を見開く。
「(緊張で声が震える…)」
バクバクと心臓が音を立てる。
「ぼくじゃきみを守るに相応しい男じゃないかもしれない。でも…きみを守る為ならぼくはこの命をかけても構わない!」
「!」
ユーゴーの想いに詩調は…
「あんたの剣は人を守る為に在るのね。それも…あたしを守る剣になろうとしてる。自分の命を捧げてまで…」
詩調はどこか嬉しそうに、悲しそうに笑う。
「あんたはちゃんと想いを伝えてくれた。
だからあたしはその想いに応える義務がある」
「………………」
「その言葉は嬉しいわ。
でも…お断りよ」
「え!?」
「守られるだけは嫌。あたしにもあんたを守らせて。あんたに比べて体力はないし役に立たないかもしれない。だからこそ剣を学んであたしはあんたを守るわ」
「……………」
「異論は認めない。
素直に頷きなさい」
胸に手を当てて不敵に笑う。
そんな詩調にキョトンとするもどこか可笑しくて笑ってしまう。
「本当にきみは気が強い」
「褒め言葉として受け取るわ」
「うん…ぼくにもきみを守らせてよ」
「決まりね」
互いに笑い合う。
チリンッ
二人を心を繋ぐように鈴の音が鳴った。
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