第49章 Divortium-君のための嘘-
「そんな音するの?」
「ほら」
ユーゴーの耳元に鈴を近付けて鳴らした。
チリン…ッ
「本当だ…優しい音がする」
ユーゴーは小さく微笑む。
「でしょ?」
詩調はふわっと笑い返す。
「っ………」
「どうかした?」
「な、なんでもない!」
「…顔、赤いけど…」
「気のせいだよ」
ユーゴーは必死に赤くなった自分の顔を片腕で覆う。
「(言えない…)」
彼女の笑った顔が可愛いなんて───……
「本当に大丈夫?」
「うん」
いつも怒ってるか不機嫌な顔しか見たことがなかった詩調の笑った表情はユーゴーにとって胸をときめかせるには効果覿面だった。
「大事にするわ」
「!」
「…何よ」
「いや…きみの口からそんな言葉が聞けるとは思わなかったから驚いて…」
「失礼ね。あたしを何だと思ってんのよ」
「え?気が強くて意地っ張りで素直じゃない女の子?」
「本当にあんたは…」
「でも優しい女の子」
「……………」
ユーゴーの言葉に恥ずかしくなって顔を背ける。
「…り…とう…」
「え?」
「ありがとう…助けてくれて…」
「どういたしまして」
ユーゴーは柔らかく笑って微笑んだ。
「あたしも持ってるんだけど…あんたにあげるわ」
ユーゴーがくれた赤い鈴と同じモノを差し出す。
「あの女が昔くれた人形の首輪に付いてたの」
“あの女”とは詩調の母親のことだ。
「もう必要ないからあんたにあげる」
「貰っていいの?」
「コレのお礼よ」
鈴をチリンと鳴らす。
「ありがとう」
彼女からの思わぬ贈り物にユーゴーは顔が緩む。
「あの馬鹿は?」
「馬鹿って…バズのこと?」
「今日は一緒じゃないのね」
「家に帰ったんじゃないかな」
「そう。なら好都合だわ」
「え?」
「あたしに剣を教えなさい」
突然の申し出に数回目を瞬きさせる。
「剣?どうして?」
「あたしには自分の身を守れる術がないの」
「……………」
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