第49章 Divortium-君のための嘘-

「何であんた達の命令に従わなきゃならないのよ!!いい加減にしないとぶっ飛ばすわよ!!」



「生意気な女め…!!」



大きく手を振り上げたのを見て詩調はギュッと目を瞑った。



「彼女から離れろ」



「「！！」」



その手は詩調の頬を叩くことなく、ピタリと止まる。



誰かの声が聞こえて詩調はそっと目を開けた。



「あんた…」



「痛がってるだろ。放せよ」



「何だお前」



詩調の傷付いた姿を見なくないと思ったユーゴーは飛び出し、少年達を鋭く睨み付ける。



「いきなり出てきて何だよ」



「こいつの知り合いか？」



その問答にユーゴーは何も答えない。



代わりに持っていた剣をチラつかせる。



「コイツ剣持ってるぞ…！」



「逃げろ！」



掴んでいた髪を詩調から放し、少年達は慌てて逃げ去った。



「……………」



ユーゴーは詩調に歩み寄る。



バツが悪そうに顔をしかめる詩調は視線を逸らす。



「…お礼なんて言わないわよ」



「きみってどうしてそんなに意地っ張りなの？」



「ケンカ売ってんの？」



「素直にありがとうって言えばいいのに」



「助けてって言った覚えはないわ」



「…ハァ」



ユーゴーは詩調のヒネくれさに溜息を吐く。



そしてその場にしゃがむと赤い鈴を差し出した。



「コレ…あげる」



「何よそれ」



「この前は…その…ごめん…」



「！」



「少し言い過ぎた…かもしれない」



「……………」



「きみの気持ちも考えず軽率なことを言った。反省してる。だから…その…よければ…」



ユーゴーは目を合わせず気まずそうに詩調に赤い鈴を渡す。



「汚い鈴」



「きみは一言余計だと思う」



「仕方ないでしょ。ホントにそう思うんだから。でも…せっかくだし受け取ってあげるわ」



「なんか上から目線…」



「貰ってあげるんだから素直に渡しなさいよ」



「はい」



詩調の掌に鈴を乗せる。



「汚れを落とせば綺麗になりそうね」



「バズがくれたんだ」



「そうなの」



「きみと仲直りにって…」



詩調は耳元に鈴を近付けて軽く鳴らす。



チリン…ッ



「優しい音」



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