第49章 Divortium-君のための嘘-
「ほら」
それを見かねたバズビーが詩調の頭にヘルメットを被せる。
「…なにコレ」
「これがありゃ少しはその赤い髪も隠れんだろ。ま、気休めにしかならないけどな。ないよりはマシだろ?」
「ダッサいヘルメット…」
「おおい!ダサいとか言うな!」
「こんなモノあったって…」
詩調はヘルメットをギュッと握る。
「泣きたいなら泣いたら?」
「…は?」
突然の言葉に詩調は驚いてユーゴーを見た。
「何であたしが泣くのよ」
「だって泣きそうな顔してる」
「気のせいよ」
「気のせいじゃないと思うけど」
「何なのよあんた…」
ユーゴーは詩調に歩み寄る。
「どうして我慢するんだよ」
「!」
「泣くのを我慢するなんて変だ」
「黙って…」
「泣くのがそんなに恥ずかしい?」
「黙ってって言ってるのがわからないの!?」
不穏な空気が流れる中、バズビーは余計な口出しをせず、二人の様子を見守っている。
「泣くのは惨めでみっともないと思ってる?」
「……………」
「泣くのは恥じゃない」
「何言って…」
「泣かないのが恥だ」
「!」
ユーゴーの言葉に詩調は目を見開いた。
「(“泣かないのが恥”…)」
「正直今のきみ、すっごくカッコ悪い」
「おいユーゴー、その辺に…」
珍しく怒るユーゴーに流石のバズビーも止めに入ろうとするが…
「何よ…あたしの気持ちなんか知らない癖に…」
「知らないよ。ぼくはきみじゃない」
「もういいわ」
ピシッと言葉で制する。
「この際だからハッキリ言ってあげる」
詩調はユーゴーをギロリと睨む。
「あたしはあんたが嫌いよ」
彼女は、彼を──拒絶した。
◇◆◇
しばらく経ったある日、ユーゴーはバズビーと一緒にいた。
「あれから妙に苛々してて誘いづらいんだよなー」
「じゃあ誘わなきゃいいんじゃない?」
「…お前、このままでいいのか?」
「何が」
「あいつと険悪なままで」
「……………」
「後悔するぞ、きっと」
心配するバズビーにユーゴーは何も答えず、顔を俯かせる。
.