第49章 Divortium-君のための嘘-
売女の女の胎から生まれた赤児は
誰からも祝福されずに育った。
体を売って生計を立てる母親と
余所に女を作って浮気を繰り返す父親は
詩調にとっては“クズ同然の最低の親”で
両親にとっては“いらない”存在だった。
髪色を理由に痛めつける両親。
彼女の赤い髪はとても珍しく
それを気味悪がる人々もいた。
薔薇のような赤は
言い方を変えれば
血のような赤でもある。
母親も父親も黒髪。
でも生まれた子供は奇妙な赤。
だからこそ、不信感を抱く者もいる。
中には“行きずりの男が孕ませて出来た子供”と噂する者も少なくはなかった。
詩調はそんな噂を毛ほども気にせず
地獄のような世界で生きてきた。
けれど…ある日、どこかの誰かが言った。
“まるで血を浴びたような真っ赤な色”だと…。
それだけの理由で
彼女は迫害を受け続けた。
知らない大人達に
殴られては罵倒され
蹴られては罵倒され
気づけば体は傷だらけだった。
それでも詩調は屈しなかった。
“負けたくない”
“絶対に泣かない”
“諦めない”
心に強く決めていた。
でも代わりに
彼女は誰も信じなくなった。
“こんな理不尽な世界、なくなってしまえばいい”
詩調はいつも、そう思っていた───。
「お前、悪魔に育てられたんだろ?」
「……………」
「父さんが言ってたんだ。お前の赤髪は悪魔に魅入られて、悪魔がお前を気に入ったから仲間の証として赤く染めたんだって!だから悪魔が本当の親なんだろ!」
「……………」
「無視かよ…。何か言い返してみろよ。それとも本当のことだから黙ってるのか?…何とか言えよ、悪魔の子!!」
「っ!!」
少年の酷い言葉にカッとなった詩調は落ちていた石を投げつけた。
ガッ
「痛えええ!!!」
「ハァ…ハァ…ッ」
少年は石が直撃した頭を手で押さえる。
「ふざけんじゃないわよ…!!!」
興奮した詩調の怒号が響き渡った。
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