第49章 Divortium-君のための嘘-
「お前は選ばれなかったのだな…」
「“お前は”だと?選ばれたのはお前らだけだ。下の連中は軒並み“聖別”されたぜ。皆殺しだ。かろうじて隠れて光を逃れた奴も完聖体(フォルシュテンディッヒ)の力を奪われ、そうじゃねえ奴は命ごと奪われた」
「そうか、同情する」
「同情するだァ?フザけた事言ってんなよ。てめえはこのことを知っていた筈だ。違うか?」
「訊いてどうする。
知らなかったと言えば信じるのか?」
「信じるさ。俺とお前の仲だ。
そうだろ?ユーゴー!」
「──バズビー……」
「“バズ”って呼べよ、昔みてえによォ!
バーナーフィンガー2!!」
「───問答は通じない様だな」
「外を見ろ。じきに夜が来る。夜が来て陛下が眠ればお前と陛下の力は入れ替わる。俺は陛下を殺すぜ。裏切り者のお前と一緒にな」
「……………」
「それとも“あいつ”も誘って三人で殺すか?」
「!」
「裏切り者のお前と、お前に裏切られたあいつと俺。三人揃えば最強だ。そうだろユーゴー」
バズビーは笑う。
「ああでも…“あいつ”はもういないんだったな」
ハッシュヴァルトは悲しむバズビーの言葉にグッと眉間を寄せ、顔を歪めた。
野に放たれた兎がいる。
そこに矢が飛んでくる。
だが矢は兎の前で落ちた。
「あ……」
その隙に兎は逃げてしまう。
だがどこからか飛んできた別の矢が逃げていた兎を仕留めた。
「何やってんだ!ヘッタクソだなお前!」
「誰」
「オイオイオォ!このバズ様に先に名乗れってか!オメーが先に名乗れよ白ネギ野郎!」
「バズっていうんだ。ぼくはユーグラム。
ユーグラム・ハッシュヴァルト」
それが二人の出会いだった。
「いや〜〜このバズ様にまんまと先に名乗らせるとは中々に狡猾なやつだ!」
「べつに名乗らせてないし、きみが勝手に名乗ったんだし」
「見どころあるぞお前!」
「なんでついてくるの」
「なんでってお前!お前みたいなショボイのがエモノ獲れると思えねえから見守ってやってんじゃねーか!」
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