第49章 Divortium-君のための嘘-
【霊王宮】
「七羽」
影の中から飛び出した七羽は甘えるように頭を体に擦り寄せる。
「キミにも苦労をかける。
あと少しだけ頑張ってくれ」
優しく撫でると七羽は嬉しそうに鳴いた。
ザワッ
「!」
梨央は目を見開き、そして柔らかく微笑んだ。
「おかえり」
胸に手を当てると半分に分かれた魂が一つに戻った感覚を感じた。
「さて、奴の所に向かおう」
一歩、足を踏み出した途端…
「な、何だ!?」
一瞬で全てが変わった。
建物も風景も全て───。
「まさか…世界を創り変えたのか!!」
七羽も異変を感じ、激しく威嚇している。
「霊王宮を潰して組み直した…」
霊王宮が落とされ
その全てが
敵の手に落ちた───……!
「霊王が…死んだ…」
その呟きは静かに空に消えた…。
◇◆◆
【真世界城(ヴァールヴェルト)】
「──それで?」
「はい。既に親衛隊(シュッツシュタッフェル)全名索敵の為、5方に分かれて出撃されました」
「待て。5方に分かれてと言ったな。お前の言う“親衛隊”には石田雨竜も入っているのか?」
「はい。そのようにせよとの陛下の御命令でしたので」
「───どっちへ向かった?」
「はっ…石田雨竜様でしたら2番枝街の方へ…」
「追え」
「はっ…!?」
「私が真世界城を離れる訳にはいかない。奴につき、奴が命令外の行動を取るようならすぐに知らせろ!」
ハッシュヴァルトの言葉に男は驚いた。
「何をしている、早く向かえ!」
「はっ…はい!ただちに向かいま」
その言葉を最後まで言い切る前に、男の目が何者かに貫かれる。ハッシュヴァルトは動じず、背後を振り返った。
「そんなに気になるか?
石田雨竜の事がよ」
「…バズビーか。何の真似だ」
「何の真似だより先に“生きていたのか”じゃねえのか?なァ!」
バズビーはハッシュヴァルトの胸倉を掴む。
「バーナーフィンガー1!」
人差し指を構えるがそれよりも先にハッシュヴァルトがバズビーの腕を掴んで器用に躱す。
「──そうか、その傷…敵ではなく陛下の“聖別”によるものか」
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