第49章 Divortium-君のための嘘-
「まずはあたしの霊圧で虚共を釣って一箇所に集める。そしてあたしの結界で虚共を閉じ込めて、外からお前達が同時に攻撃を放った瞬間、あたしが結界を解除する。そして黒腔を閉じる。異論はあるか」
「ないよ」
「もしそれで失敗したらどうすんだ」
「失敗?…するわけがない」
「随分な自信だな。…根拠は?」
「そりゃあもちろん…」
含み笑いを浮かべて千歳は二人を見る。
「信じているからだ、お前達のことを」
伏見は目を見開き、少女は柔らかげに笑んだ。
「始めるぞ」
少女と伏見がその場から消えると千歳は目を閉じる。周囲から音が消えたような静けさが流れると千歳の身体から青白い力が放出された。
するとその霊圧に釣られて虚が次々と千歳の近くに引き寄せられてくる。ゆっくりと目を開けると、結界が展開し、虚の群れを閉じ込めた。
身動きが取れない虚達は逃れようと虚閃を発射させる。だが防御力に長けた家系の当主である千歳の結界は破られることはない。
「頼んだぞ」
千歳の視線の先には結界を挟んで少女と伏見が待ち構えている。暴れ続ける虚の群れに向け、二人は同時に剣を振ったのを見計らい、千歳は結界を解除した。
二つの攻撃が虚の群れを直撃すると、衝撃で突風が起こり、三人の衣服が激しく煽られる。
一体残らず完全に消滅させると、三人は開いたままの黒腔に鋒を突きつけた。
「「「“射て”」」」
三つの光の束が綺麗に並んで黒腔の空間を閉じ始める。そして裂け目は消え、歪んでいた世界の乱れも元通りになった。
「あたしの作戦は上手くいったな」
「虚の気配も消えてる」
「黒腔も閉じたし、これでもう…」
ビュンッ
「!!」
風を切るような音が間近で聞こえ、千歳は咄嗟に反応し、体を反転させながら後ろに逸らす。
「…何の真似だ?」
鋭い目つきで伏見を睨む。
「何の真似だァ?そんなの決まってんだろ」
千歳の背後に忍び寄り、首目掛けて剣を振り下ろした伏見がニヤリと嗤う。
「テメェらを殺す。今ので協力関係は終いだ。こっからは俺がテメェらを殺す時間なんだよ」
「…ハァ、お前も大概しつこいな」
「悪ィな、これが俺の遣り方だ」
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