第49章 Divortium-君のための嘘-
「俺は感謝してるぜ。ユーハバッハがババアを殺してくれたおかげで俺は晴れて自由だ。何をしても咎められねえし、誰も困らねえ。俺が霊王の暗殺に失敗した時でさえ、王族共は何も言いやがらなかった。ま、俺の力を恐れて逆らえなかったんだろうがな」
「キミはなんて無神経なことを…!」
「そんなことより早く続きやろうぜ」
「……………」
「まだどっちも死んでねえだろうが」
「!!」
ニヤリと笑った伏見が少女の視界から姿を消す。驚く暇もなく、少女の目の前に現れた伏見は口角を上げて笑った。
「死ね───!!」
剣を振り下ろす。だが少女は剣を構えて攻撃を防ぐ。
ガキィン!!
二つの刃のぶつかり合う音が響き渡る。
「っ………」
「上手く防いだじゃねーか」
「(やはり力の差があるか…)」
「けど…」
「!」
伏見が片足を後ろに下げる。
「下がガラ空きだぜ!!」
ガッ
「うぐっ!!」
腹部に強烈な痛みが走る。呻き声を漏らした少女は吹き飛び、テーブルと椅子を巻き込みながらその場に蹲る。
「げほっ!げほっ!」
蹴られた箇所を両手で押さえ、嗚咽感が襲うも、吐かないように必死に堪える。
「やっぱ力が半減されてんな。チッ…これじゃつまんねー。なァ、お前の強さはこんなモンじゃねえはずだろ?」
「うっ…ハァ…ハァ…ッ」
「お前の言葉は間違ってたってことだな」
「ハァ…ハァ…」
「自分の力を驕ってる?そりゃテメェだろ。俺の強さは本物だった。あっさり証明できちまったな」
不気味な笑みで嗤う伏見の眼は冷たかった。梨央は嗚咽感が収まると、伏見を見上げて言う。
「もう…やめてくれ」
「あァ?」
「これ以上の争いは互いの傷を増やすだけだ。このままじゃキミ達の関係が壊れる」
「…そうか。テメェは俺達のことを心配してんのか。幼馴染同士で傷付け合い、殺し合う事は互いを苦しめるだけ。そう言いてえんだろ?」
少女は悲しげに頷いた。
「ふ…くくく…」
「?伏見…?」
「やっぱテメェは甘いなァ。俺はガキの頃からずーっと思ってたぜ。“クソみたいなアマちゃん”だってなあ!?」
「……………」
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