第49章 Divortium-君のための嘘-
「泣き虫で我儘で、優しい世界にいるのが『当たり前』だと思って育ったクソみたいなアマちゃんだテメェは」
「優しい世界にいるのが当たり前だとは思ってない。ただ私は…誰かを救える、そんな世界にいるだけで…」
「その考えが腹立つんだよ。何が誰かを救える世界だ。そんなの無理に決まってんだろうが。この世界はな、残酷なんだよ。誰かが傷付かない世界なんて存在しねえ」
「……………」
「だからお前はアマちゃんなんだよ」
「この世界は…彼女と彼の生きた世界なんだ。大好きな家族がいて、大事な幼馴染がいて…彼女の世界は幸せで溢れてたんだ。それをあの男が一瞬で奪い去った。そしてあの男はまた彼女の幸せを壊そうとしてる。そんなの許されるはずがない」
ボロボロになりながらも少女は立ち上がる。
「だから私は彼女を護る為にキミを止める!彼女がこれ以上悲しみで壊れてしまわないように!」
「そうかよ…じゃあ止めてみろよ」
無表情で鋒を少女に突きつける。
「テメェの強さ、俺に寄越せ」
伏見がこれから何をするのかを瞬時に理解した少女は持っていた剣を伏見に突きつけた。
そして───……
「「“射て”───!!!」」
二つの声が重なると、それに呼応するように互いの鋒から凄まじい光線が勢い良く発射された。
その風圧に圧され、周囲の壁は剥がれるように吹き飛び、窓ガラスも全て粉々に粉砕した。
二つの光の束が真ん中でぶつかり合おうとした瞬間…そこに飛び込んだ人物が振り切った武器によって光線は激しい音を立てて消滅する。
「「!!」」
伏見と少女は驚いた顔を浮かべた。
「あーあ、塔が壊れて外が丸見えじゃないか」
光線を消滅させた人物は巨大な斧に似た武器を肩に乗せて言った。
「チッ」
伏見はその人物を見て舌打ちをする。
「だがギリギリ間に合ったな」
「何でテメェが此処にいやがる」
「久しぶりだな、二人とも」
夕陽色の髪を二つ結びに束ねた少女──夕凪千歳はニヤリと笑った。
「よくも邪魔しやがったな」
「殺し合いとは随分と解せない事をしてるじゃないか」
「安心しろ。後でテメェも殺すつもりだ」
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