第48章 Aurum-名も亡き人形-
「僕を…君達と一緒にいさせて!!」
「「当たり前だ」」
二人は声を揃えて雅の思いを受け止める。
「梨央…僕は…仲間を侮辱した。みんなの存在を否定したんだ」
その瞳からは涙が溢れ出す。
「ごめん…ごめん二人とも…!
仲間を…死なせてしまった…!」
「雅…」
「もしあいつらがいたら迷わずお前を殴っただろうな」
「特に詩調は二、三発殴っただろうね」
「あいつ容赦ねえからな」
「けどわかってるな?こうなることを解っててキミは“名も亡き人形”でいることを続けた」
「うん…殴られて当然だよ」
「それから…他人の名を語って十番隊士達を使われてない倉庫に呼び出して怪我を負わせたのはキミだな?」
「!」
蒼生は驚いた顔で雅を見た。
「…彼らが鬼灯さんにあんなことをしたのが許せなかったんだ。だから手紙で彼らを倉庫に呼び出して…怪我をさせた。我慢が利かなかった。ごめん…」
「確かに奴等がしたことは今でも許せない。だが人を傷付けることを嫌うキミなら分かってるだろ?暴力では何も解決しないってことを」
「うん…終わった後に後悔したよ。暴力で人を服従させても何も解決しないことが。彼らには本当に申し訳ないことをした…」
「分かってるならこれ以上は何も言わない」
「(彼女には全てお見通しだったんだ…)」
雅は本当に敵わないなと微笑む。
「全く、キミの思い込みには困ったものだな」
「ごめん…」
「私達はキミのことが好きなんだからキミを傷付けるようなことはしない」
「…ありがとう」
黄金色の瞳から涙を流して頭を下げる。
梨央は小さく微笑んだ。
「さて…話し合いも済んだことだし…いっちー達を追いかけなきゃ」
「ユーハバッハの野郎は…」
「霊王を殺しに向かった。キミ達は此処で待ってて。必ず奴を止めてみせるから」
「…分かった」
「今日は素直だね」
「ここから先はお前の役目だろ。頼むぞ…母さんの仇をとってくれ。俺達の幸せを壊したあの男を絶対に倒せ」
「もちろん。私には希望がいる。必ず彼らがあの男を止めてくれるよ」
梨央は柔らかげに微笑む。
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