第48章 Aurum-名も亡き人形-
「雅、ちゃんと罪を償って零番隊に帰っておいで。キミの席はいつでも空けてあるから」
「うん、ありがとう」
「蒼生くん、キミがいたから私はここまで頑張ってこれた。いつも傍にいてくれてありがとう。迷惑ばかりかけてごめん」
「迷惑なんて思ったこと一度もねえよ。それにお前を独りにさせるのが心配だから傍にいるだけだ」
「優しいなぁ、お兄ちゃんは」
「だからお兄ちゃんって言う…」
「大好き」
ギュッと蒼生に抱き着いた。
「本当に大好きだったよ。私のことを護ってくれてありがとう。これからも私の大好きなお兄ちゃんでいてね」
「……………」
名残惜しそうに身体を離す。梨央は泣きそうな顔で笑っている。そして今度は雅を抱きしめた。
「こんな私を隊長と慕ってくれてありがとう。キミ達は私の自慢の仲間だ」
「どうしたの…何かもう二度と会えないみたいな別れ方なんだけど…」
「言いたくなっただけだよ」
「そっか…。僕も君には感謝してる。どんな君でも僕らにとっては最高の隊長だよ」
雅も抱きしめ返す。
そして体を離してニコッと笑う。
「じゃあ行ってくる」
踵を返して二人に背を向け、歩き出すと、突然手を引かれて振り返る。
「蒼生くん?どうしたの?」
「……………」
「手、離してくれないと…」
「“─────”」
「え?何?聞こえなかった」
「何でもねえよ」
繋がれた手は放れていく。
「お前を信じてる。お前は俺の自慢の妹だ。ユーハバッハなんかに敗けたりしねえ。お前には俺がついてる。だから…頑張れ。」
蒼生は真っ直ぐに梨央を見た。
「頑張る」
梨央も笑って蒼生を見る。
「じゃあ」
今度こそ二人に背を向けて、梨央は一護達の後を追って行った。
「行っちゃったね…」
「……………」
雅の言葉を聞きながら、蒼生はどこか悲しげな顔で、胸辺りの死覇装をギュッと握りしめた…。
next…