第48章 Aurum-名も亡き人形-
「でも…」
「キミが私の仲間であることに変わりはないのだから」
「梨央…」
「そして今も仲間だと思っている」
「けど最終的に決めるのはお前だぜ」
「蒼生…」
「キミがあの男に忠誠を誓い、役に立つ事こそが本当に幸せだと云うなら私は無理維持するつもりはない。心の底から笑える場所なら私はキミを手放したくないが潔く諦める」
「絶対諦めねえだろお前」
「蒼生くんちょっと黙って」
ゴホンッとわざと咳払いをする。
「だが…あの男とこれから生きていく上でキミが笑えず、幸せになれないと云うなら話は別だ」
「なァ雅」
「ねぇ雅」
二つの声が同時に重なる。
「「心の底から本当に笑える場所はどっちだ?」」
「………………」
「私達のところに戻って来るか」
「あの男のところに居続けるか」
「「決めるのはキミ/お前だ」」
選択を迫られ、雅は言葉を詰まらせる。
「キミが帰りたい場所は零番隊?
それとも見えざる帝国?」
「───僕は……」
『みっくん』
『流祇流』
『雅クン』
『雅』
『雅───……』
みんなの声が聞こえた
自分の名前を呼んでくれる
優しい声が…。
「っ…………」
役に立てなければ捨てられる
その恐怖が心を支配していた
陛下に必要とされなくなることが怖くて
また昔のような生活に戻るのが怖くて
独りぼっちになるのが怖くて…
必死に役に立って成果を上げようとした
でも…
必死に役に立つことに精を出そうとすれば
心に穴が空いたような感覚がしていた
陛下に褒められても
仲間から羨ましがられても
何も、感じなかった
本当にそう思ってくれているのか
本当に自分を必要としてくれているのか
いつも不安で、疑わしかったからだ
「僕は…」
ある時から気付いてしまった
あの眼
陛下が自分を見るあの眼はまるで───……
「零番隊に帰りたい…!!」
光にも似た黄金色の瞳が涙で滲む。
詰まりかける声を、必死に絞り出す。
.