第48章 Aurum-名も亡き人形-
「君達は僕と何もかもが違った。
一瞬、自分の立場を考えたよ」
「そんなに変わらねえだろ」
蒼生の言葉を否定するように首を振る。
「まるで住んでる世界が違った。着ている物、身に付けている物、育った環境、全てが違って見えた。彼女と出会った時、僕は思わず息を呑んでしまった。あの泣き虫だった女の子がとても綺麗になってたから」
雅は口許に笑みを浮かべる。
「そして彼女は僕を仲間に誘ってくれた」
「何でお前を誘ったと思う?」
「さぁ…偶然彼女の視界に僕が入ったからじゃない?」
「“偶然”か…」
「あの時、彼女の目に止まったのは偶然僕で、僕も偶然彼女の目に止まった。もしかしたら彼女の目に入ったのが僕じゃない誰かだったら…彼女はその誰かを仲間に誘ってたと思う」
「それは違うな」
「!!」
雅は驚いて声のした方に顔を向ける。
「梨央……」
「私がキミを仲間に誘ったのは偶然なんかじゃない。最初からキミだけを誘うつもりだった。他の誰かを仲間に誘う理由がない」
「……………」
どこか怒っている雰囲気を纏っている梨央に雅は居心地が悪そうに目を逸らす。
「梨央、僕は君に謝らなきゃいけないことがある。千年前のあの日、僕は…」
「あの場所にいたんだろ」
「!?どうして…」
「私は気付いてたよ。キミがあの部屋でじっと私を見ていたこと。でも私は恐怖でキミを気にかける余裕はなかった。まぁ…医師がキミをコテンパンにのしたと思っていたが」
「お前知ってたのか」
「うん。害はなさそうだと思ったから放っておいた。まさか再会したキミがあの時の子供だとは思わなかったけどな」
「し、知ってたならどうして…」
「キミを仲間に誘ったか…か?それはな、私がキミを仲間にしたいと思ったからだ。キミが何者だろうと関係ない。私がキミと一緒にいたいから誘ったんだ」
「!」
「何か文句ある?」
「…ない、です」
梨央の予想外の回答に雅は呆気に取られる。そして可笑しそうに笑った。
.