第48章 Aurum-名も亡き人形-
交差させた腕で両目を覆い隠す。
涙を流して泣く姿を見て蒼生は雅の上から退く。
「お前は優秀だけど阿呆だな」
「ごめん…本当にごめん…」
「バァカ」
「っ、ごめん…ごめんなさい…」
自分の愚かさに何度も謝罪をする。
一度犯した過ちは二度と消えない。
「お前を殺さなくて良かった」
「僕は君を殺していたかもしれない…」
「それはあいつの命令だからか?」
腕を退けた雅は静かに頷く。
蒼生は小さく笑って空を仰いだ。
「お前は俺を殺さない」
「……………」
「というか…お前は誰も殺さねえよ」
雅は蒼生を見る。
「聖兎の時も手加減したろ。
傷付けないようにわざと急所を外してたな」
「あの子、元軍人だったんだね。道理で短剣を手放した後の動きが俊敏で隙が無いと思った」
「あいつもお前と同じだよ」
「え?」
「親に虐待されて片眼を潰された。医者に診てもらったが既に手遅れらしくてな…失明した眼は回復する余地は無いと言われて以来、ずっと包帯を巻いて隠してる」
「……………」
「あいつも言ってたよ。
“この世界は残酷だ”ってな…」
「そっか…」
「孤児院を出た後は自らの意志で軍隊に入隊。そこで猛者共を全員ぶっ倒してトップの成績を残して卒業。そして梨央と出会ってあいつは今うちで使用人として働いてる。普段のあいつは頼りねえけど守る時はしっかり守るんだよ」
「あんな小さな子達を怯えさせた…」
「ほんとにな」
「あの子達は…」
「捨て子だ」
「!」
「それを梨央が引き取った」
「彼女は…本当に優しいね」
クスッと笑みを溢して起き上がる。
「やっぱり…君達は綺麗だなぁ」
「は?綺麗?」
「全部が綺麗で僕の目に入れるのはとても眩し過ぎる。だから前髪を伸ばしてるんだ。僕の汚れた眼は君達のような“綺麗なものを汚す”から…」
「……………」
「蒼生、本当にごめん」
「一つ訊く」
「何?」
「お前との出会いは仕組まれたものだったのか」
「うん…」
「……………」
「陛下は君と彼女を監視する為に僕を君達と出会わせた」
.