第48章 Aurum-名も亡き人形-
いつかは知られてしまうと分かっていても
僕は“流祇流雅”と“名も亡き人形”を演じ分けた
片方を無くしても
もう片方の役は生きているから。
流祇流雅として演じている間は
少しだけ気が楽だった
評価を気にしなくていい
気負わなくてもいいんだって思えるから
でもやっぱり“名も亡き人形”の時は
みんなが僕を役立たずだと罵る
滅却師でも無いくせに
陛下の為に役に立つなんて
身の程を知れって貶される
だから僕は居心地が悪かった
二つある“居場所”は
一つは幸せで
もう一つは窮屈だった
“流祇流雅”として笑い合える場所
“名も亡き人形”として笑い合えない場所
僕は時々、どっちが本当の自分なのか、分からなくなってしまう時がある
あの方の為に人を傷付けることを選ぶ僕と
みんなの為に人を傷付けないことを選ぶ僕
“どっちが…本当の僕なんだろう”
「(きっとその答えは“みんな”が知ってる。)」
仲間だと言ってくれた
こんな僕を好きだと言ってくれた
僕は───ずっと『流祇流雅』でいたいと思ってしまった
みんなと過ごす時間が楽しかった
とても居心地が良かった
みんなの役に立てることが
彼女の役に立てることが
本当に嬉しかった
それなのに僕は…
君達を信じきれずにいた
仲間をずっと騙していた
「(それでも分かってた。みんなならきっと…僕を笑って許してくれることを───……)」
梨央も
蒼生も
琉生君も
一色さんも
鬼灯さんも
すごく怒られるだろうけど
許してくれたと思う────
僕の仲間はそういう人達だ
鬼灯さんは泣きながら怒って
一色さんは般若みたいに怒って
琉生君はふざけながら怒って
蒼生はがっつり怒って
梨央は咎めるように怒る
それでも嬉しい
こんな僕を受け入れてくれる
笑って───名前を呼んでくれるんだ
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