第48章 Aurum-名も亡き人形-
「あいつはなあ!仲間を大事にしてんだ!お前らが独りにならねえように!傷付かねえようにずっと見守ってきたんだ!お前らを死なせるような真似は絶対にしたくねえからってあいつは自分を犠牲にしてお前らのことを護ってんだろうが!!」
「……………」
「それなのにテメェは見捨てるだの失望するだの…うだうだとうるせえ。陰険はその鬱陶しい前髪だけにしとけよボケが。」
「君って本当に口が悪いよね…」
雅は苦笑した。
「テメェは俺達の…あいつの何を見てきたんだよ」
辛そうな表情で蒼生は雅の胸倉から手を放す。
「なァ雅…あいつが今までお前に失望したこと、あったかよ」
「!」
「役に立たないからって…あいつらがお前を見捨てたことあったかって聞いてんだ」
「────」
蒼生の言葉に雅は目を見開き、気付かされる。
「(…いつも僕に向けられるのは感謝の言葉だった。)」
その眼差しに“失望”や“差別”は無かった。
彼女が僕に向けるのはいつも優しさで。
僕を否定する言葉は無かった。
「(本当はわかってたんだ。)」
みんなが僕に失望しないことも
彼女が僕を見捨てないことも
心のどこかで本当はわかってた
役に立たなくても
みんなが僕を咎めないことも
彼女が僕を許してくれることも
全部…わかってたはずだった。
「(でも…怖かったんだ。)」
役に立てず捨てられてしまえば
僕は僕を失ってしまう
“流祇流雅”の名前も
もう誰も呼んでくれなくなる
そうなれば僕は“名も亡き人形”として
陛下の為に生き、陛下の為に死に
人を傷付けるだけの存在になってしまう
それがたまらなく嫌だった
人を傷付けてでも陛下の役に立つ
そうすればあの方は僕を見捨てない
僕が陛下を裏切らない限り
陛下は僕を
“自分の利益のため”
“世界のため”に利用する
“『誰か』の為じゃない”
それでもいいと思った
役に立ちさえすれば
僕は独りにならずに済む──……
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