第48章 Aurum-名も亡き人形-
「…僕もあの場所にいたんだよ。千年前のあの悲劇が起きた場所にね」
「!?」
「それに僕は君達の医師と戦ったんだけど見事にやられてしまって…それを陛下に咎められたんだ。『期待を裏切ってくれたな』って」
「待て…あの場所にいたって…お前…」
「“いらないもの”を排除する為に君達の屋敷に忍び込んで、あの部屋に潜んでた」
「子供部屋か…?」
「そう。僕は君達のことをずっと見てた。“あの子”が泣き虫なことも、君が妹を追って部屋を飛び出していったことも…全部知ってる」
蒼生は驚いた顔で雅を凝視している。
「彼女が滅却師を憎んでいることも…ね。だから僕が陛下と繋がってることは言えなかった」
「!」
「僕の正体が名も亡き人形だと知れば…彼女は僕を見捨てるかも知れないでしょ?」
「本気で…そう思ってんのか?」
「……………」
雅は黙り込んでしまう。
「僕は君達を信じられなかった。君達もきっと僕を見捨てると思ってたから。戦いで役に立てない僕を切り捨てるかも知れないと思うと怖かった。みんなに失望されるのが…怖かった」
その声は震えていた。
「だから役立たずと思われないように…僕は必死で仲間の役に立とうとした。君達の…役に立とうとしたんだ。君達に見捨てられたら…僕は“居場所”を失くしてしまうから」
「ふざけんな。黙って聞いてりゃさっきから何だテメェ」
「蒼生…?」
「役に立てねえからって俺達がお前を見捨てると思ってんのかよ。俺と梨央はそんな理由でお前を零番隊に誘ったんじゃねえよ。テメェの思い込みにはうんざりだ」
「!」
「俺達がお前を信じてねえわけねえだろ!あいつらがお前を見捨てるわけねえだろ!役に立たないからって…お前に失望するわけねえだろ!!」
「っ………」
「お前は仲間を何だと思ってやがる。俺達の信頼はそんなものなのかよ。ふざけんじゃねえよ…あいつが…お前を手放すはずねえだろうが…」
「…どうして言い切れるの?」
「っこの馬鹿!!それくらいも分かんねえのか!!」
蒼生は怒りで叫ぶ。
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