第48章 Aurum-名も亡き人形-
「どうせお前達だって“あいつ”に失望して、役に立たなければ見捨てるに決まってる…!」
それは何かに縋り付くように。
何かに必死に手を伸ばすように。
何かを求めるかのように
────言葉を吐き出した。
「そうか…テメェは怖いのか」
「!怖い…?」
「怖いんだろ?あの男に見捨てられるのが。だから必死に期待に応えようとする。役立たずにならないように…必死に生きてんだな、お前」
「知ったような口を利くな。お前にはそういう経験がないから言えるんだ。役に立てなければ終わりなんだ。あの方は不要になった者を容赦なく切り捨てる。だから必死に役に立とうと…」
「役に立つことがそんなに大事か?」
「当たり前だ。お前達だって役に立たない仲間をいつまでも手元に置いておくことはしないだろう?」
「零番隊には役立たずがいねえからお前の気持ちは分からねえな」
「……………」
此方を睨む名も亡き人形に蒼生はハッキリと告げた。
「気付け。あの男は自分の利益の為なら役に立つ相手すらも切り捨てる奴だ。だからお前が必死に頑張ってもあの男は必ずお前を手放す」
名も亡き人形は悲しい眼で蒼生を見ている。
「じゃあ…もうどうすればいいんだ…」
その時、強めの風が吹く。
「…どうすれば…あの方に見捨てられずに済む…?」
被っていたフードが風で脱げ、名も亡き人形の素顔が露わになる。蒼生は大きく目を見開いた。
「……──お前……」
黒髪が風で靡く。
「ねぇ…教えてよ」
蒼生は開いた口が塞がらない。
「───僕はどうすれば役に立てる…?」
伸び過ぎた前髪で両眼は隠れているが、一粒の涙が頬を伝った。
「雅────……!!?」
蒼生は衝撃を受けて固まる。
敵に捕らえられたと思い込んでいた雅が、目の前にいる。
しかも…“名も亡き人形”として─────。
「何で…お前…」
落胆した雅は涙を流したまま、魂が抜けたように放心していた。
「っ!!」
ガッ
“名も亡き人形”の正体が雅だと知ってショックを受けた蒼生は苛立つようにギリッと歯を噛み締め、雅の胸ぐらに手を伸ばす。
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