第48章 Aurum-名も亡き人形-
「そいつは元軍人だ」
「「!!」」
第三者の声がして二人は同時に顔を向けると…
「“クラヴ・マガ”」
蒼生が現れ、聖兎は頭を下げる。
「海外で生まれた接近格闘術で聖兎はうちで雇われる前は短剣を得意とする軍人だった。そこで身につけたのが“軍人用格闘術、クラヴ・マガ”。この技は一歩間違えれば人をも殺せる」
名も亡き人形はジッと蒼生を見ている。
「こんなナリしてるから誤解を生むかもしれねえが…軍の中ではこいつが一番最強だった」
「………………」
「聖兎」
「…はい」
「双子を連れて宮殿の中に入れ」
「坊ちゃんは…」
「コイツに用がある」
蒼生は名も亡き人形に視線を向けた。
「どうかお気をつけて」
目を瞑って恐怖に怯える双子を抱えて聖兎は宮殿の中に入った。
「あいつをどうした」
「“あいつ”?」
「てめぇら…うちの三席に何しやがった」
「ああ…」
“三席”と言われて思い出した様に声を出す。
「どこにいやがる」
「知ってどうする」
「仲間を取り返す」
「仲間だと?笑わせる」
「!」
「敵を前にしても戦うことを恐れて刀を振れない奴は役立たずだろう?」
「何だと…?」
「役立たずを仲間と呼ぶのかお前達は」
「今の言葉、取り消せ」
「何故?」
「あいつは役立たずじゃねえからだ」
「………………」
「二度と俺達の仲間を侮辱すんじゃねえ」
「その仲間は“いらないもの”として排除された」
「何だと!?」
「この手で殺した」
「…てめぇが殺したのか?」
「そうだ」
「嘘だな」
「!」
蒼生がハッキリと応える。
「何故嘘だと断言できる?」
「だってお前…人を殺したことねえだろ」
「は?」
「殺すと宣言する割には…お前から殺気を感じねえ。それだけじゃねえぞ。戦う闘志すらお前から感じねえんだ」
「……………」
「だからテメェはあいつを殺してねえ。そうなんだろ?」
「(いつかの医師と同じ事を言っている…)」
「つーかお前も滅却師なのか?」
「違う。滅却師ではない」
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