第48章 Aurum-名も亡き人形-
ガキィン!
「!」
聖兎は交差した短剣二つを使って敵の刀を押し返す。弾き飛ばされた名も亡き人形は少し距離をとる。
「誰も陛下には勝てない」
「そんなことはありません!」
「何故そう断言できる」
「お嬢様がいます!お嬢様なら必ず陛下を倒して下さいます!」
「無理だ」
「貴方こそ何故断言するのですか」
「陛下は強い。あの方は滅却師の王だ。王の力には誰も敵わない。きっとあの少女も…」
「絶対に勝ちます!!」
「……………」
「確かに陛下という方はお強いのかも知れません。ですがあの方は自分の目的の為に戦っています。けどお嬢様は違います。あの方は仲間と友を護る為に戦っているのです」
「!」
「それに陛下は昔、蒼月の里を滅茶苦茶にしました。それだけではありません。三大家の当主を殺害し…お嬢様と坊ちゃんから母親を奪ったのです!」
「……………」
「貴方はそれを知っていますか?」
「…知っている。あの場にいたからな」
「では何故、あの方に従っているのです」
「……………」
何も答えない名も亡き人形を睨みつけ、聖兎は真剣な表情を見せる。
「お嬢様の進む道を阻む者は誰であろうと許しません」
「……………」
「あの方は…ずっと孤独だった私を光の当たる場所へと連れ出して下さいました。こんな醜い顔でもお嬢様は受け入れてくれた。あの方は私を救ってくれたんです。ですから…お嬢様の為に私は貴方を此処で倒します!!」
今度は聖兎が一気に間合いを詰める。
「その細腕で何ができる」
ガキィンッ
短剣が一本、弾き飛ばされる。
聖兎はすぐにもう一本の短剣を逆手に持ち替え、下から勢いよく突き上げた。
「!」
短剣を躱そうと体を後ろに逸らして危機を回避する。
「必ず躱すと思いました」
口許に笑みを浮かべた聖兎は身を屈めて、名も亡き人形に足払いをかけた。
「っ……!」
ぐらりとバランスを崩す体。そのまま後ろに倒れるが…丁度その位置に先ほど自分が弾いた短剣が鋒を上にして置かれていることに気付いた。
「!!」
このまま倒れれば確実に背中を刺す。
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