第47章 Volo-千の時を越えて-
「漆黒の翼翻し」
「闇夜に踊る月詠の下に」
「沈む朝を誘いし鐘の音が」
「光朽ちる暗黒世界に」
「深淵の邂逅を生み出さん」
「罪人よ、おいで」
「深き闇の底に堕ちといで」
「消え逝く魂に身を委ね」
「永遠の眠りを約束しよう」
「廻る運命よ、応えておくれ」
「道理を外れた罪人に」
「百の罰を与えん事を」
パンッと両手を合わせる。
「『不転大殺陵』」
背後に巨大な黒い御堂のようなものが現れる。
「百年後の尸魂界から夜を百夜奪って創造した、お前を弔う墓標の群だ」
冷たい眼でユーハバッハを見据える。
「お前の纏う黒までも吸い上げ、お前の血も肉も骨も何もかも黒く潰して無に還る。転生すらも許さない。深き闇の底に堕ちていけ」
ガクンッ
「!?」
その時突然、梨央の体が崩れるように床に倒れた。
「何だ…?急に体の力が…」
ユーハバッハも驚いて見ている。なんとかして立ち上がろうとするが、体に力が入らず、床に伏せたまま唖然とする。
「(奴は力を使ってない…。じゃあ何が起きた?何で急に体の自由が奪われた…?)」
ぐるぐると思考が混乱する。
「(血を流し過ぎたか?いや…違う。卍解をした際に“与えた”血の量が原因じゃない。私は何もしてないのにどうして…)」
そこでハッと何かに気付く。
「(“私は何も”…?)」
まさか…“彼女”に何かあったのか?
『向こう』で何か起きている…?
「突然倒れたかと思えば放心状態か?」
「!」
「以前にも似たような状況があったな」
ユーハバッハが嗤う。
「あの時は貴様が私を殺すと宣言し、死に急ぐ貴様に失望した私がこの剣で殺した。随分と昔だが最近の出来事にも思える」
「……………」
「状況が逆転したな」
「(伏見…余計な事をしてくれた…)」
意識が繋がっている梨央は伏見が彼方にいることを知る。
「(今彼女と入れ替わってあっちの世界に意識を持っていくのは危険だ…。今度は“彼女”がこの男に殺されてしまう。)」
悔しくなって唇を噛む。
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