第47章 Volo-千の時を越えて-
「でもね!ボク達はあるじが好きだよ!」
「僕達を拾ってくれたし、美味しいご飯とあったかい寝床をくれた!」
「(そういえばお二人は捨て子…)」
「あるじがボク達を嫌いでもいいの…。寝る前にいつも子守唄歌ってくれるし、絵本読んでくれる」
「僕も一緒にお絵かきしてくれる!あるじね、絵がすっごく上手なんだよ〜」
「お嬢様がお二人を嫌いになることは絶対にありません。お嬢様はお二人のことをとても大切に思っています。だから…お嬢様が帰ってきたら何で意地悪するのか聞いてみましょう?」
「あるじ…怒らない?」
「大丈夫です。お嬢様はお優しい方です。そんなことでお二人を叱ったりなどしませんよ」
「じゃあ…あるじに僕達のこと好きか聞いてみる」
「好きならギュって抱きしめてくれるよ!」
「はい。そうしましょう」
ザリッ
「!」
足音が聞こえ、聖兎は後ろを振り返る。
そこには黒装束を着た人物がいた。
「…どちら様でしょうか」
双子は聖兎の後ろに隠れる。
「陛下の御命令で、お前達を始末する」
◇◆◇
色々と絶不調過ぎて梨央の顔色は一向に悪くなるばかりだ。
「何故、私が死ななかったのか。何故、私からお前の力がはがれ落ちたのか。何故、自分が敗れるのか。“知りたい”と考えているな」
「(足の感覚も治ってる…くそ…)」
「“眼”を開いた私は今、この瞬間から遥か未来に渡る全てを見通す事ができる。見通したものを全て“知る”事ができる。そして知った“力”は全て私に味方する。その力で私を倒す事はおろか、傷付けることすらできなくなるのだ。それが我が力『全知全能』」
梨央は悔しげに唇を噛んだ。
「こんな…ところで…」
守るって決めたんだ
彼の未来を
彼が安心して暮らせる世界を
だから奴と契約を交わした
取り引きに応じたというのに…
このままじゃ…『望み』は叶わない
復讐も果たせず
兄を護れない───!!
「(これじゃあ何の為に私が罪を犯したのか…分からない…)」
ぎゅっと目を瞑る。
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