第47章 Volo-千の時を越えて-
「これで貴様を永遠に葬り去る事ができる」
ユーハバッハは片手を挙げた。
すると空に巨大な槍のようなものが出現する。先端を鋭く尖らせ、光の反射でギラリと光った。
嫌な予感がした───。
槍が狙いを定める先には、全身に力が入らず、床に伏せている梨央がいる。
「後悔しているか」
「…後悔?」
「私に復讐すると誓い立てた事をだ」
「……………」
「悔いるが良い、浅はかな自分を」
クソ
「私に挑んだ愚かさを」
クソ
「仲間を死なせた無力な自分を」
クソ…!!
「貴様は判断を間違えたのだ」
『遠い未来で必ず、あの子達がお前を止める』
「…罪禍よ、貴様の忠告は意味が無かったようだ。今からこの女は貴様の所へ送ってやろう」
嘲笑うように罪禍に向けて呟いた。
「(私は何の為に生き返った…)」
勝てないのか
この男に
「我が力の前に“理解”と“対策”の介在する余地は無い」
護れないのか
兄を
「私が目にしたものは全て私の前に無力」
本当にこれで終わるのか
母様の仇は討てないのか
私は『望み』を果たせないのか
「──ほぅ…その眼。母を殺された時と同じ眼をしている。まだ私を殺せると思っているか」
こいつのせいで
私の幸せは奪われたというのに
「我が名はユーハバッハ」
だから私は
全てを失う代わりに
罪を犯したというのに
「お前の全てを奪うものだ」
敗けるのか
私は───……
ユーハバッハが叫んだ瞬間、空に浮上する槍が勢いよく放たれた。
「チッ…」
急激な速さで落下してくる槍は真っ直ぐに梨央に向けて飛んで来る。
刀を握る力は無い
刀を振る力も無い
何も、無い───……
「ごめん…頑張れなかった」
泣きそうな声で蒼生を思って謝罪する。そして槍は梨央の体を貫いた。
血飛沫が派手に宙を舞う。
「私の見た通り、貴様は私を殺せなかった」
動かなくなった梨央の横を通り過ぎる。
「零番隊は落ちた。
次はお前が落ちよ、霊王」
next…