第47章 Volo-千の時を越えて-
「落ち着け…」
そう自分に言い聞かせ、深呼吸をした。
「(霊圧を探って見つけ出すか…)」
冷静になると蒼生は今まさに敵の親玉と対立しているであろう大事な妹に向けて静かに告げる。
「悪ィな梨央。今すぐにでも駆けつけてお前と一緒に奴をぶっ倒してえが…“やることができた”。加勢は無理そうだ」
“だから…”と言葉を促す。
「絶対に負けんな」
仲間に目を移すと申し訳なさそうに言う。
「ごめんな…こんなことに巻き込んじまって。お前らの死は無駄にしねえ」
そして蒼生は背を向ける。
「あいつは必ず殺す───」
そう強く誓った蒼生は雅の霊圧を探り、歩き出して行った。
◇◆◇
その頃───……
「ねぇ聖兎…」
「どうしました?」
「あるじと蒼生…大丈夫かな…」
「こわいおおかみさんに食べられちゃう…?」
不安げな丙と壬は泣きそうな顔で聞いた。
「ここにも…おおかみさん来る…?」
聖兎は安心させるように笑った。
「ご心配は無用です!お嬢様と坊ちゃんは強いので敗けたりしません!そして此処に怖い狼さんが来ても赤ずきんの私がお二人を御守り致します!」
むん!っと気合を入れる聖兎を見た二人はパァッと笑顔になる。
「そうだよね!あるじと蒼生は強いから絶対に負けないもんね!」
「もしここに狼さんが来ても聖兎がいるもんね!」
「そうです。ですから安心してくださいね」
「「うん!」」
「お嬢様はお優しい方です。きっと全てを終わらせてお二人を抱きしめてくれますよ」
「うーん…でもね聖兎…」
「あるじ…時々おかしいの」
「え?」
「いつもは優しいのにたまーにあるじじゃなくなるの!」
「どういうことですか?」
「ボク達にも分からないんだけどね…あるじが時々あるじじゃない時があるんだ…」
「違う人になる!」
「その時のあるじ!すっごく意地悪なの!」
「僕達に嫌なことするんだ」
「そう…なのですか?」
「だからボク達は“あるじじゃないあるじ”がキライ!」
「(どういうことでしょう?お嬢様がお二人を苛めることはあり得ません。ましてや嫌がらせなど…)」
.