第47章 Volo-千の時を越えて-
「母様の無念もこれで果たされただろう。『望み』は叶った。後は私が世界から消えるだけ…」
目を細め、切なげに笑む。
「みんなの所に行かなくちゃ」
冷たくなってしまった
仲間の元へ───。
「…ここ、まで…とは…」
声が聞こえた
肉塊となった筈の男の声が───。
後ろから、聞こえた────。
ドォンッ!
「!!」
《ギャアアアアア!!!》
一つの光が凄まじい速さで梨央の横を通過し、後ろにいた天照大御神を攻撃した。甲高い奇声を上げ、消滅する寸前で叫ぶ。
「天照大御神!私の血を纏え!」
まだ乾いていない床に広がる血溜まりに這いつくばって向かおうとする天照大御神だが…
《ガ…ガガ…》
その血すら、黒に呑まれて消えた。
「馬鹿な…血が無くなった!?」
血が無いことで天照大御神は消滅した。
「貴様の血が無ければ、アレは何も出来ん。ならば貴様ごと消すのが手っ取り早いとも考えたが…」
高速で心臓がバクバクと音を立てる。
「早々に殺してしまっては惜しいからな」
米神から流れる嫌な汗が頬を伝い、ポタリと地面に落下した。
「貴様の卍解、破らせてもらったぞ」
「っ!」
バッと後ろを振り向いた瞬間、身体に穴を空けられる。ゴボッと口から大量の血を吐き出す。
「私をここまで追い詰めたのは貴様が初めてだ!!だが“半分になった”貴様では私は殺せぬ!!」
そこに立っていたのは天照大御神に骨の髄までしゃぶり尽くされた筈のユーハバッハだった。
「…嘘、だろ…何で…死んで…ない…!」
「あれで死んだと思ったか?」
「!」
「あの程度で殺したと錯覚したか?」
梨央は苦しげに顔を歪め、憎悪を宿した眼でユーハバッハを鋭く睨み付ける。
「だから貴様は甘いのだ」
その男は、あの頃と同じ失望した眼で梨央を見た。
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