第47章 Volo-千の時を越えて-
二つに斬られた“それ”が磁石のように引き合い、ピッタリと一つに合わさる。
「まさか…」
そして何事もなかった様に天照大御神が復活した。
《ガアアアア!!!》
「馬鹿な…!」
「後悔したか?」
蔑んだ眼で笑う。
「だが完全に後悔するのはまだ早い」
ガラリと表情を豹変させる。
「『血染悪鬼・常闇ノ死飢』」
天照大御神は大きな口を開き、ユーハバッハを捕食した。
バキッ
ゴリッ
ガリッ
皮膚を噛みちぎる音がした。
骨を噛み砕く音がした。
血を啜る音がした。
その光景を見た者はトラウマを植え付けるだろう。天照大御神の“食事”は汚く、粗暴で、悍ましい。
「くっ」
足に力が入らず、その場に座り込む。
「(クソ…止血してもどうせまた血を流す。余り血を与え過ぎるとこっちが危ない…)」
見るからに顔色が青白い梨央。
「(だがここで諦めるわけにはいかない。)」
痛みを堪え、立ち上がり、“食事”を終えた天照大御神に近付く。そして…
「やあやあ、“ユーハバッハらしきもの”。随分と惨めな形になったな。気分はどうだ?」
肉塊に問いかける。
床には天照大御神が食した“ユーハバッハらしきもの”の血が辺りに飛び散っていた。
「ああ、もう喋る事もできないのか」
彼女の後ろには口の回りを血で汚した天照大御神が食事に満足したように血の涙を流している。
《キシャアアアア!!!》
ギョロギョロと一ツ目が不気味に動く。
「残念だよユーハバッハ。お前の力はこんなものか。『聖別』を以てしても私には勝てなかった。これは自業自得だ。呪うならお前の運命を呪うんだな」
冷めた眼で肉塊を見下ろす。
「これで…復讐は果たせた。本当は私の手で跡形も無く葬りたいんだが…これはこれで良しとしよう」
血の付いた隊首羽織を翻し、肉塊に背を向ける。
「“残りも食べていいよ”」
それを合図に天照大御神はニヤァ…と不気味に笑う。そして待ってましたと言わんばかりの勢いで肉塊に喰らい付いた。
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