第47章 Volo-千の時を越えて-
「『闇錐』」
床下から飛び出るように無数の黒い闇が鋭い棒状となってユーハバッハを串刺しにしようと襲い掛かる。
だが、すんでのところで後ろに飛んで回避したユーハバッハ。交差するように突き出た棒状の闇が其処にあった。
「(チッ…中々しぶといな。)」
出血した所を手で押さえながら苦痛の表情を浮かべ、ユーハバッハを睨む。
《キシャアアアアアアアア!!!!!》
断末魔のような悍ましい奇声を上げ、ユーハバッハを威嚇する。その甲高い奇声は霊王宮に響き渡り、鼓膜が破れそうになったユーハバッハは両手で耳を塞いだ。
ポタリ…
天照大御神の眼から血の涙が零れる。
「足を噛まれたのに痛みを感じないだろう?」
「…何をした」
ユーハバッハは睨み付ける。
「ああそうだ。天照大御神血染羽の能力の話をする途中だったな。この子の能力は──……『捕食したモノの血を吸収し、五感を奪う事』」
「!?」
「足の感覚が無くなってきた頃だろ?」
「(『皮膚感覚』を奪われたか…)」
「さぁて…次は何処を奪われるかな」
ニヤリと笑えば、天照大御神がユーハバッハに負わされた傷が治り始める。
「五感全てを失った者が最後、どんな結末を迎えたか、お前も身を以って知るといい」
「……………」
「それとこの子に傷を負わせても無駄だぞ。私の血を吸収しているからな、すぐに治る。…卑怯だとか思うなよ。生死をかけた戦いに卑怯も何もないんだから」
復活した天照大御神が牙を剥き出しにしてユーハバッハに襲いかかった。向かって来る黒い塊を真っ二つに斬り裂く。
左右に分かれ、床に転がる。
「貴様の血が有る限り、“それ”は死なんと云う事だろうが…私には手応えがあり過ぎた」
ピクリとも動かない天照大御神を見てユーハバッハはフッと笑みを溢す。
「その考えが甘いんだよ」
「何?」
「今自分で言っただろうに。“私の血が有る限り、その子は死なない”と。私の血が無い訳でもないのに…何故“手応えがある”と感じた?」
「!」
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