第47章 Volo-千の時を越えて-
「何だ…“それ”は?」
ユーハバッハは不思議そうに“それ”を見上げながら問うた。梨央は刺された箇所を手で庇いながら辛そうな顔で答えた。
「卍解だ、私の」
「“それ”が卍解…?貴様の斬魄刀とでも言うのか…?」
「そうだ。お前が悍ましいと思っているこの子こそが私の斬魄刀であり、私の卍解だ」
すると突然、塊の中央が目を開いた。
「!」
一ツ目が不気味にギョロギョロと動く。
「私の卍解の発動条件は…『相手に自分を斬らせること』。そして私の卍解は…私と敵以外のいる場所では使えないのが欠点だ」
「何故だ」
「この子は殺戮兵器だから敵味方の認識が出来ない。大勢の前で卍解を使えば…味方さえも巻き込む可能性がある」
「!」
「それもあって私はあまり卍解を使わない」
ブォン…ッ
“それ”に羽が生えた。
「第二形態が始まる」
ガチンッ
次にギザギザときた鋭い歯が生えた。
「…貴様の斬魄刀の能力は何だ?」
「あぁ…簡単だよ」
羽が上下に動いて黒い塊が宙に浮上する。血溜まりから出たせいで、塊には梨央の血がべっとりと付着していた。
「天照大御神血染の能力は───……」
ビュンッ!
「あ。」
「!!」
説明する途中で天照大御神は物凄い速さでユーハバッハに向かって飛んで行った。
ユーハバッハは剣を振って黒い塊を弾き飛ばす。吹き飛んだ天照大御神は床に当たるとボールのように跳ねた。
「随分と弱いな、貴様の斬魄刀は」
「“そうだ、私の斬魄刀は弱い”」
「?」
グシャッ
「!!」
何やら音が聞こえ、足元に目を向ける。
「!?」
すると天照大御神が鋭い歯でユーハバッハの足に噛み付いていた。噛まれている箇所から血が出ているのに…痛みを全く感じない。
ザシュッ
天照大御神を斬り捨てる。だが触手達が激しく蠢き、ユーハバッハを捕らえようとした。
「私を封じられると思っているのか」
ガクンッ
「!?」
負傷した足では自由が利かず、ユーハバッハは体がもつれそうになる。
「ぐ……!」
剣を床に刺し、倒れそうになる体を支えた。
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