第47章 Volo-千の時を越えて-
「もっと私を愉しませてくれ!」
ババッと複数の光の棒を伸ばす。
「『百歩欄干』!!」
動きを封じる為に放った縛道はユーハバッハの力で塞がれる。ドーム型の壁に見覚えがあった。
「それは…静血装(ブルート・ヴェーネ)?」
「『外殻静血装(ブルート・ヴェーネ・アンバーベン)』。
防御壁を体外まで拡張する」
「面白いな。だが夕凪家の防御壁程では無い。そんなもの…容易く破壊できる」
片手を突き出して掌を開く。
「零道ノ六『風殺賀硫』」
鬼の仮面を被った化物が現れ、その大きな口から突風を吹き出す。ぶおっと強烈な風と共にユーハバッハに襲いかかる。
守っていた防御壁が破壊され、梨央は一気に距離を詰め、ユーハバッハの首をガッと掴む。
「こんなものじゃないぞ…復讐は」
怖い顔を浮かべ、冷徹な眼差しを向ける。
だが何故かユーハバッハの口許に笑みが張りついていた。
「私に触れたな?」
「!」
黒い線が腕を侵食する。
「外殻静血装(ブルート・ヴェーネ・アンバーベン)は私の体に触れる全てを侵食して静血装(ブルート・ヴェーネ)を拡大する。私に触れればお前の体までもな!左半身を貰うぞ仁科梨央!!!」
目にまで黒い線が入り、侵食されかける。
「フ…ッ」
「!」
「無駄だ」
「何…!?」
侵食された左半身と目の黒い線が消えた。
「何故…消えた…?」
「私は既に侵食されている」
ユーハバッハは瞠目する。
「罪と云う侵食に!体を蝕まれている!」
「……………」
「だから…」
掴んだままの首をグシャッと握り潰す。
「私に外殻静血装は効かない」
ブシュッと派手に血が噴き出す。
ユーハバッハは間合いを取って梨央から離れた。
「そうか…そうだったな。貴様は既に罪人だった。千年前のあの日…禁忌を犯したあの瞬間から貴様は薄汚れた罪に侵されていた」
梨央は小さく笑っているが、その笑みはどこか残酷に思える。
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