第47章 Volo-千の時を越えて-
「…一つ忘れてないか?」
「何をだ?」
「私にも母と同じ力があることをだ」
「!?」
「さっき…“腕”で払ったな?なら私がお前から奪うのは…“両腕の自由”だ」
ガクンッ
「!」
「腕が重たくなっただろう。筋力も半分、能力も半分。お前の腕は今までの半分の仕事しかできない」
ユーハバッハは剣を振る。
「刀を振るのもゆるやかなものだな」
ザシュッ
ユーハバッハを斬り捨てた。
「私を見誤るな」
体を反転させて回し蹴りを食らわす。
ガッ!
「がっ」
蹴られた衝撃で勢いよく吹っ飛ぶ。床に身体を打ち付けて更に吹き飛んだ。
「…なぁ、真っ二つになった“ユーハ”。力の半分を削がれた滅却師の頭目よ。忌み嫌う死神の頭目に半分の力で粉微塵にされる気分はどうだ」
「…気分だと?悪いように見えるか」
力を溢れさせる。
「死神共の頂点に立つ最強の死神。その頭目が私の力を恐れて力の半分を殺いだのだ。こんな気分の良い話があるか」
ユーハバッハの周囲に光が現れる。
「…だが残念だったな。半分に殺いだその力さえ…私は自らに再び与える事ができる」
「!」
「理解できぬなら教えてやる。
何者も私から何一つ奪う事はできぬ」
両腕の自由が解かれた?
これも奴の力か…
「貴様が先程奪った両腕の自由も私の力を以てすれば直す事ができる」
「……………」
「知らぬなら今ここで知れ。この世界の全ては私が奪い去る為にあるのだ!」
ユーハバッハの周囲から出ていた光が幾つも分かれ、それが同時に渦を巻くように梨央に向かって放たれる。
「“奪い去る為に”…か」
ぱんっ
「やれやれ…傲慢にも程があるな」
その光の束が梨央に当たる直前で消滅した。
「お前の面目の為にわざわざ力を半分に殺いでやったというのに…」
「───…何だと?」
「全力のお前が叩き潰されたら滅却師共への面目が立たないだろう!」
「……………」
「それにすぐに殺してしまえば私の愉しみが減るじゃないか!こんなに愉しいのにわざわざ早く殺してしまうほど馬鹿じゃない!」
狂喜に染まる顔で笑い、宙を蹴る。
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