第47章 Volo-千の時を越えて-
「今こそ復讐を果たす時だ。お前を殺して母様の仇を討つ。そして…命を懸けて戦った仲間の死に報いる為に──!!」
危機感を感じたユーハバッハはバッと掌を梨央に向けて広げ、何かを叫ぼうとするが…
「!?」
「声が出ないか?」
「!」
「そりゃそうだろうな。私が消した。“お前の中から声という声を”。だから叫んでも無駄だ」
「(喉を潰したのか)」
「これでお前の耳障りな声を聞かずに済む」
冷酷な顔で笑う。そして指先をパチンと鳴らせば、巨大な棒状の結晶が出現し、ユーハバッハの身体を貫いた。
結晶が身体を貫通したまま、落下していくユーハバッハは自身の喉元に指先を食い込ませ、穴を空けて叫んだ。
「“私は私に『声』を与える”!!!
『大聖弓(ザンクト・ボーゲン)』!!!」
すると無数の矢が下から伸び、背中からユーハバッハを貫いた。
「!!」
自分で自分を射った!?
「…恐ろしい奴だな」
自らの身体に矢を射ち、力尽くで戻って来たユーハバッハ。
「よし決めた」
ゆっくりと後ろを振り向く。
「殺して殺して殺しまくろう」
その声はどこか楽しげに弾んでいた。
ユーハバッハは口許に笑みを浮かべる。
瞬時に剣を構えると一瞬で間合いを詰め、梨央も刀を同時に振り下ろした。
ガキィン!!
互いの刃が鋭い音を立て交じり合う。
「…随分と顔つきが変わったな」
「気のせいだ」
「随分と嬉しそうな顔だ。私を殺すと決めたらこうも凄惨な顔になるのだな」
その眼はギラギラと輝いており、歯を見せてニィッと笑う梨央の顔は、どこか異常だった。
「それともこれが本当の貴様か。戦いを愉しむ姿はまるで戦闘狂の如く、獰猛で荒々しく、敵を斬ることしか脳のない残忍さだ」
梨央の顔目掛けて、剣を突く。それを巧みに躱し、刀を振り下ろす。ユーハバッハはそれを腕で受け止め、力強く弾き返す。
「だが変わってもこの程度か!やはり貴様は弱い!死に朽ちた兄と仲間を護れず、復讐心だけで私を殺そうとする!浅はかで愚かだ!」
そう侮辱して嗤う。だが梨央は口許を歪めて不気味に笑った。
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