第47章 Volo-千の時を越えて-
「仲間も死んだ。残るは貴様一人だ」
「ユーハバッハ」
千年ぶりに本人を前にして名を呼んだ。
「私はお前に復讐する為に生き返った。お前は既に未来を見ていたのだろう?お前に殺された私が再び生き返り、復讐者と成り果てたことを」
「貴様が“取り引き”に応じ、『望み』の為に生き返った事は既に未来で見ていた。だからこうして貴様は今私の目の前にいる」
「お前は私達から母親を奪った。そして幸せを壊していった。全ての始まりはお前だった」
怒りで顔が歪む。
「おかげで襲撃を受けた後は散々だったよ。崩壊した里に加えて…私達の関係すら壊したんだからな」
「貴様達の関係に亀裂が入ったのは、貴様達が原因だろう。互いを信じきれず、互いに距離を置いた。そのせいで今も溝が埋まらぬ。幼馴染というのは…呆気なく壊れるのだな」
「お前が伏見を唆したせいで奴は霊王を殺そうとした。おかげで『強さ』の意味を履き違えたまま、力を求め続けた。その結果が奴を間違った道へと導いたんだ」
「ほぅ…貴様は彼奴を嫌っていると思っていたが…少しは気に掛けていたのだな」
「嫌いに決まってんだろ。あんな最低な奴。彼は絶望の底に落ちたまま、這い上がって来られなくなったんだ。奴の力は“強さ”なんかじゃない。ただの“暴力”だ。暴力で人を斬っている。だから私はあの男の強さは本物だと認めない」
「なら貴様の力はなんだ。貴様は何の為に強さを求めている?」
「大切な人達を護るため。大事なものを守るため。その為なら私はお前だって殺す。母様だって同じ強さを求めたんだ」
「あの女が死ぬのは運命だと言ったはずだ」
「あぁ…そうか。じゃあ…」
背中に括り付けている鞘から刀をゆっくりと引き抜く。
「私がお前を殺すのも運命だな。」
鋒をユーハバッハに突きつける。
「『闇喰』」
「!!」
その直後、鋒に闇が集まり、強烈な光線が発射された。突然の攻撃に反応が数秒遅れたユーハバッハは防御する暇も与えられず、直に喰らってしまい、遠くに吹き飛んだ。
「ぐ……」
「集中しないと殺すぞ」
冷たい声で言い放ち、ユーハバッハの真上に現れる。青い瞳が暗く染まり、何の感情も無い表情でユーハバッハを見下ろす。
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