第47章 Volo-千の時を越えて-
『言ったな。お前は泣き虫だから俺が傍にいなきゃ駄目だって。ずっと傍にいるって約束したよ』
『私を置いていかないで…っ』
『(この手を離さないと誓った。昔から泣き虫なコイツを不安にさせないように手を繋いだ。それでコイツが安心して笑うから……───)』
蒼生は梨央の手を取り、優しく包み込むように握った。
『っ…どうして手なんか握るの…』
『……………』
何も言わず、蒼生は繋がれた手を見下ろす。梨央はギュッと目を瞑り、仲間に告げた。
『キミ達は…後悔しないの?』
『しないわ。だって隊長の為に剣を振るって、隊長の役に立って死ぬんだもの。後悔なんてあるはずないわ』
『たとえこの命が消えても悔いはないよ』
そこまで言われて目を開き、悲しげに蒼生を見ると、彼は“自分も同じだ”というような顔で笑った。
『…分かった。キミ達にそこまで言われたら…頷くしかないだろう。私はキミ達を信じるよ』
『ありがとう』
蒼生の手を強く握り返す。
『お兄ちゃん…』
『おう』
『この手を離したくないって言ったら…怒る?』
『怒らねえけど…離さねえとお前の為に戦いに行けねえだろ?だから手は放す』
スルッと繋がれた手が離れる。
『何があってもキミ達を助けない。例え目の前でキミ達が死のうとも。私はキミ達の“お願い”を聞き入れる』
『うん、ありがとう』
『お礼を言うのはこっちだよ。私の為に命を懸けてくれて有難う。私の為に戦ってくれて有難う。私はキミ達を…誇りに思う』
『あたし達を見つけてくれて有難う、隊長』
『霙達に希望をくれて有難う、梨央ちゃん』
『オレ達に楽しさを教えてくれて有難うっス、梨央チャン』
『僕達に居場所を与えてくれて有難う、梨央』
“大好き”
『私も…キミ達と出会えて良かった。大好きだよ』
潤んだ瞳で笑えば、みんなも同じ顔で笑う。
『傍にいなくても俺はお前を想ってる。離れていても心は一つだ。だから俺を信じろ』
『うん。信じてるよ…お兄ちゃん───。』
『お兄ちゃん言うなっての』
蒼生は笑いながら、いつものようにお決まりの台詞を返した…。
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