第47章 Volo-千の時を越えて-
『絶望の底に居たあたし達に希望を抱かせてくれた。“居場所”を与えてくれたのよ』
『霙達の過去を知っても、梨央ちゃんは優しい手を差し伸べてくれた。“絶望なんか感じさせないくらい楽しい人生をあげる”って言ってくれたの、覚えてる?』
霙は懐かしそうに微笑む。
『もちろん…覚えてるよ。私はキミ達に言ったんだ。“一緒に来ないか”って。そしたら…キミ達は私の差し出した手を取ってくれた』
『楽しかったよ、君のおかげで。僕達はもう十分、君から希望を貰った。前に進む勇気を貰った。だから今度は…僕達が君に恩を返す番だ』
『……………』
『隊長、ここで死んだら何もかもお終いなのよ。ユーハバッハを倒すんでしょう?』
『…キミ達は…本当にそれでいいの?』
『梨央ちゃんの為に死ねるなら本望だよ』
霙はニコッと笑う。
『…悪いけど…そのお願いは…聞けない』
『梨央チャン…』
『私は素晴らしい仲間に恵まれた。百年もの間、私の帰りを待ち続けてくれた。そしてこれからも私と共に剣を取り合い、戦ってくれると信じている』
涙ぐんだ瞳でみんなを見る。
『私はもう…私の目の前で大切な人達が死んでいくのは見たくないんだ…。ねぇお願い…まだまだ楽しい人生をあげるから…幸せをあげるから…一緒に生きて零番隊舎に…私達の“居場所”に帰ろう──……』
『…そうね、帰りたいわ。あたし達がずっと笑い合える事ができる大事な“居場所”に。』
詩調のその切なげな声に“戻る気はない”のだと悟る。彼らの意思は固い。現に四人は首を振っていない。
『…蒼生…君の意見を聞かせて』
『……………』
『あ…蒼生くん…』
ずっと黙っていた蒼生だが、小さく息を吐き、梨央を見た。
『兄貴は妹を護るのが役目だからな』
『!!』
『お前なら…解ってくれるな?』
眉を下げ、切なげに笑う蒼生の言葉に梨央は目頭が熱くなるのを感じた。
『みんな…私の前からいなくなるの…?』
『お前なら大丈夫だろ…?』
『大丈夫じゃないよ…ねぇお兄ちゃん…私を独りにしないって約束は?ずっと傍にいるって言ったでしょう…?』
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