第47章 Volo-千の時を越えて-
「…さて、通して貰おうか」
余裕淡々の表情を浮かべ、目の前に立つユーハバッハを冷たい眼で睨みつける。
「駆け寄らぬのか」
「!」
「兄の亡骸に」
「……………」
血を流し動かない仲間の痛々しい姿を眉を顰めて無言で見つめる。思い出すのは仲間と交わした“約束”だった。
『最初で最後のお願い───……』
微笑む霙が静かに告げる。
『もし霙達が殺られそうになっても、絶対に助けないでほしいの』
『!?』
『あたし達じゃきっとアイツには勝てない。だから隊長を護る為に全力を尽くすわ』
『それには蒼生クンの協力も必要っス。もちろん…判断は蒼生クンに任せるっスよ』
『…お前ら』
『あとは君達が頷いてくれれば良い』
『あたし達の覚悟はとっくに決まってるわ』
『何を言っている…?』
『きっと梨央ちゃんのことだから、霙達が危ない状況になれば自分の役目を捨てて、霙達を護ってくれると思う』
『でもそれじゃあ駄目なんスよ』
『何が駄目なの?仲間を護るのは隊長として当然の事でしょう?何がどうしてそういう話し合いになった…?』
『言ったでしょ。あたし達じゃあの男には勝てないからよ。だから隊長に全てを任せるの』
『い…いやいや…ちょっと待って。まだ敗けるなんて分からないじゃないか。そんなの…最初から諦めるなんて…』
『梨央チャンの足手まといにはなりなくないんスよ。オレらを護りながら戦うの…辛いっしょ?』
『キミ達を足手まといだなんて思ったことは一度もない。それにキミ達を護りながら戦うのは全然苦にならないんだよ。だから…その話し合いは無かったことにしよう。ね?』
何とかして説得させようとするが、四人は笑んだまま、頷こうとしない。梨央は掌をギュッと握りしめた。
『頼むから…簡単に命を捨てないでくれ。キミ達がいなくなったら…』
『梨央チャンの役目はユーハバッハを倒すこと。“オレ達を護って死ぬこと”じゃないっしょ?』
『何でそこまでして私の為なんかに…』
『それはね…あたし達が隊長に命を救われたからよ』
『!』
詩調は優しげな笑みで言った。
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