第46章 Zero-零を受け継ぐ者たち-
「だけどそいつは白い湯の話っス」
「この赤い湯は失くした血を全く新しいものへと入れ換える」
ナックルヴァールは目を見開く。
気付くと刀を手にした蒼生に斬られていた。
赤い湯を浴びたことで蒼生の血は止まっている。
「こんな餓鬼に殺されるなんて…惨めだろ?」
「…あァ、惨めだよ」
「餓鬼だからって甘く見てたお前の落ち度だぜ」
「…悔しいが最後に勝ったと思っちまったよ。全くナメてたのはどっちだよ…こんな餓鬼に敗けるなんて…致命的だぜ…」
そう言ってナックルヴァールは血を噴いて倒れた。
「邪魔者は消えた。
今度こそテメェの番だぜ」
蒼生はユーハバッハと対峙する。
「(来るか…それともこっちから間合いを詰めるか…。奴の力はジジィと戦った千年前の奴自身と今回のコピーの2戦分の情報しか無え…)」
蒼生は刀を握り締める。
「(余計な事は考えるな、迷いを捨てろ。もう…梨央の泣く姿は見たくねえ───……)」
辛そうに顔をしかめる。
その時…
幾つもの光がユーハバッハの手の中に集まる。
蒼生は驚いて目を見開いた。
肩に微かな違和感を感じたのだ。
ふと肩に目を向けると何かで撃たれた様な穴が空いていた。
「は……っ?なん、だ…?」
ボタボタッと血が床に溢れ、床を赤く染める。
「『聖別(アウスヴェーレン)』」
「!」
「不要な滅却師の命と力を微収し、必要な者に分け与える。『力の分配』。奪われた者は死に、与えられた者は更なる力を得て蘇る。“陛下の御力の一つ”だ」
ハッシュヴァルトはそう説明する。
「霊子の塊ではなく力の移動だ。霊子を防ぐこの命の樹とやらも防げまい」
「成程な…更なる力か…。それでさっきは通らなかった弾で俺の体に穴が空いたって訳か…」
「間違いが2つある。1つ目にこの力は“更なる力”ではなく先程出すヒマが無かった僕本来の力。そして2つ目に君の体を貫いたのは“弾”じゃない」
聖別の力で更なる力を得たリジェはライフル銃を構え、蒼生に向けて射撃した。
ドンッ
だが、琉生と詩調と霙が刀を交差する様に弾丸を防いだ。
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